マンガの影響で「マッキンゼー」を辞めた男 高島宏平・オイシックス社長の好き嫌い(上)

✎ 1〜 ✎ 18 ✎ 19 ✎ 20 ✎ 21
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

高島:ときどき社員と一緒にフットサルをやっているのですが、通常、試合が終わった後は、みんなで一緒に写真を撮ったり、食事をしますよね。でも、僕が負けたときは、さっさと帰ってしまいます(笑)。

楠木:子どもみたいですね(笑)。

高島:そうです。よく社員に怒られています。でも、僕にしてみれば、負けているのにみんなで写真を撮ったり、ご飯を食べるなんて信じられないわけですよ。そこは、ムリに合わせません。

ビジネスにおいて、「負けず嫌い」といかに折り合うか

楠木:ただ、フットサルの試合は、その日で終わるわけですよね。一方、会社の経営というのは続いていく。これは「負け」とは違うかもしれませんが、乗り越えられないことがあったときは、どういうふうに折り合いをつけるのですか。家に帰るわけにはいかないでしょう(笑)。

高島:さっき言ったように、楽しもうと工夫をするわけです。会社を始めてから14年経つのですが、いまだ心から勝ったと思った瞬間はありません。ふがいない思いが蓄積されているというのが実態と言っていいくらいです。しかし、その状態で日々を過ごすとなると、僕自身もつらいですし、周りの社員はもっとつらい。なので、楽しむようにしています。事業を展開するプロセスは楽しいですし。ただ、根っこには悔しいという感情がいつもある。

楠木:そこには、簡単に勝てないほうがいい、という感情はないのですか。

高島:それはありません。

楠木:そこは好き嫌いの本当に微細なヒダヒダの部分ですね。高島さんが起業をした時代は、先ほど言ったように、うまいことやって成功しようという人が多かった。でも、高島さんはそれでは満足ができない。自分が満足することと、世の中に役立つことを両立させるビジネスモデルを考える。そして、それは当然のことながら困難がつきまとうのだけれど、ほかの誰もやらないから、自分でやることにする。だからといって、苦労を地道に積み重ねるというよりは、仕事を楽しむという基本姿勢。そうした一連の好き嫌いが、結果的に、オイシックスのビジネスを形作っているのだと思います。(次回へ続く)

(構成:松岡賢治、撮影:尾形文繁)

楠木教授の著書『好き嫌いと経営』好評発売中

楠木 建 一橋ビジネススクール特任教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くすのき けん / Ken Kusunoki

1964年東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より一橋ビジネススクール教授。2023年から現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)のほか、近著に『経営読書記録(表・裏)』(日本経済新聞出版)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事