好き嫌いがわかりにくい人の典型?
楠木:自分のことでも他人のことでも、僕は割と好き嫌いにこだわるほうでして。仕事の局面でもプライベートでも、その人の好き嫌いをわかったうえでやり取りしたいし、自分の好き嫌いも相手にわかっておいてもらいたい、というクチです。たとえば僕の書いたものにしても、もちろん嫌う人も大勢います。時々「とにかくこういうのは大嫌い! 最悪!」みたいな、割と全否定的な批判をいただくのですが、これがけっこううれしい。なるほど、こういうタイプの人には嫌われるんだな、ということがわかるのが面白いわけです。言葉にするとちょっと表現がややこしいのですが、特に自分が嫌いなタイプの好き嫌いの持ち主に嫌われると、「そうそう、こういうタイプの人に嫌われたかったんだ」と、うれしくなる。「おっ、自分の好き嫌いがきっちり伝わっているな……」と、心の中で小さくガッツポーズですね。割とイヤな性格ですが。
経営者の方々と仕事の場で話をしていると、その人が何が好きで何が嫌いか、好みがまったくわからない人が意外と多い。仕事としてのコミュニケーションはきわめて機能的で円滑なのですが、人工知能と話をしているようなもので、無色透明でつかみどころがない。僕はそういう人を「ツルンとした人」と呼んでいるのですが、ツルンとした人と話すのはどうも苦手です。まあ、経営者という立場で仕事に関する話をしていると、それも仕方ないのかもしれません。
僕の経験ですと、金融業界のエリートには、特にツルンとした人が多いような気がします。松本さんといえば、開成高校、東京大学と来て、ゴールドマン・サックスの共同経営者のポストを捨ててマネックス証券を立ち上げた男と、メディアで騒がれました。僕が最初にお会いしたのは10年以上前だと思いますが、松本さんはどうも好き嫌いがわかりにくそうな人だな……、というのが僕の第一印象でしたね。実際はそうではないということが後でわかったのですが。
松本:好き嫌いはあるのですが、あまり言わないですよね。今回、楠木さんにあらためて聞かれて困っちゃったんですけど。
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