高島:実感としては、向いていないという感じですね。好きか嫌いかで言えば、金銭にしても、物欲にしても人並みではないでしょうか。ただ、おカネ儲けを目的にした経営は、自分は向いていないなという気持ちです。また、NPOとかボランティアでやらなかったのは、経済的に成功しなかったらダメだなと強く思っていたから。自己犠牲でやってはダメだと考えていました。
楠木:世の中の役に立つことこそ、スケーラビリティの追求というか、スケールアップが必要であると。
高島:よいことをサスティナブルにやっていく、規模を大きくしていくことが大事なのです。それを目的として努力していくことも、会社を作ってから好きであることがわかりました。単に、善人が善行をするというのではなく、自分の欲求に基づいて、やりたいことと世の中の役に立つことを両立させるビジネスモデルを目指そうとしました。
病的な負けず嫌い
楠木:話を戻して、そもそも「食」をビジネスの対象にしたのはなぜですか。
高島:衣食住というのは社会生活において基盤となる部分で、そこにある問題を解決すれば世の中の役に立つという考えはありました。そして、調べてみると、食の分野には、さまざまな問題があることがわかってきました。放っておくと、そのうちに大変になるぞという予感もありましたね。
楠木:当時は、農家、生産者にも、さほどの問題意識はなかったのですか。
高島:ないことはなかったと思います。ただ、日々携わっている現場の人たちが解決するのは難しく、外部からやらないと解決しないだろうと考えていました。また、ITを活用すれば解決できる問題があると思っていましたが、IT系の人は誰も手をつけなかった。それなら、僕らがやらないといけないのじゃないかと考えたのです。
楠木:生鮮野菜のネット販売なんて、聞いただけでもオペレーションが難しそうですよね。
高島:僕らも、周囲からは「絶対やめとけ」と言われるばかりで。そして、周囲から止められれば止められるほど、やる気が出ました(笑)。オレたちがやらないと、という勝手な使命感が強くなりました。
楠木:それも高島さんの好き嫌いによるものですか。やることが大変そうで、難しいほどやる気が出るという。
高島:うーん、そこはちょっと違うかもしれません。やってみたら予想以上に大変でしたが、難しければ難しいほどうれしいといったマゾ的な部分はありませんから(笑)。最初から、うまくいったほうがいいとは思っているのです。大体、そうはいきませんけれど。
楠木:ほとんどのことは思いどおりにはいかないものですからね。
高島:マゾ的な部分はないのですが、事業がうまくいかない、なかなか前に進んでいかいないときは、つらくてもつらいとは思わないようにしています。そういう状態を楽しめる工夫をして、楽しいと思える意識にもっていくというか。
楠木:厳しく自分を追い込むタイプではないということですね。
高島:そうですね。ただし、病的な負けず嫌いではあります。
楠木:それがわかるエピソードがあったら教えてくださいますか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら