NYで開眼!栃木で「竹の農場」盛り上げる男の発想 IBMの中庭を見たことが家業の再興に繋がった
「父は『そんなことは簡単だ』と言うのです。深く耕した土に植えれば、タケは狭い場所でもちゃんと育つんだと。さらに高さを制限した不格好な竹にしない方法については、まさにそれに適した品種が農場にあるって言うんです」
それはモウソウチクの4分の1サイズの品種で、若山さんが会社に提案したら即採用となった。これこそが現在に至るまでの若山農場の稼ぎ頭のひとつ、オリジナル品種「姫曙孟宗竹」となった。
「姫曙孟宗竹が幕張の日本IBMに植えられた時はうれしかったですね。『都市空間の中でタケほど映える植物はない』って、ものすごく評判になりました。そこからは苗木の注文が大量に舞い込んで。雇われ社長の立場で姫曙孟宗竹を販売しても、実家はあまり儲かりませんから、私が戻って苗木卸だけでなく、施工会社への直接販売をやるようになって今に至ります」
完全否定していた父の品種改良の仕事。その存在すら気にも留めていなかった姫曙孟宗竹に導かれるようにして家業を継いだ若山さん。タケとの関係はさらに深まっていくことになる。
聖地巡礼で押し寄せたファンの気持ちを変えた竹林
若山さんが観光地としての一般公開に踏み切ったのは、2017年4月。これを後押ししたのは、“聖地巡礼”で押し寄せた若者たちとの会話からだった。
「うちの竹林のことが知られるようになり、テレビCMや映画のロケで使っていただける機会が増えていきました。特に『るろうに剣心 伝説の最期編』のポスターの影響は大きかったです」
「聖地巡礼っていうんですか。日曜日で休日だったのに、ファンが押し寄せてきてしまったことがあって。しかたなく農場内の案内をボランティアでしたんです。みなさん歩きながら、口々に映画のこととか俳優のことを私に話しかけてくるんですよ。タケのこともうちの業務のことも、まったく興味を示さずに」
と、苦笑いしながら当時の状況を明かしてくれる若山さん。ところが、この中の若者のひと言に、新規ビジネスの可能性を見出すことになる。
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