NYで開眼!栃木で「竹の農場」盛り上げる男の発想 IBMの中庭を見たことが家業の再興に繋がった

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タケノコ生産のプロが語るタケノコのあく抜きの新常識

タケノコを知り尽くす若山さんが、あく抜きの“新常識”についても教えてくれた。

「竹かんむりに旬と書いて筍ですよね。鮮度が命の食材だということは、誰もが知っています。でも、朝掘りが流通している京都を除いて、タケノコを収穫当日に店頭に並べるのは現実的に無理です。だからこそ鮮度を保証するには、自分で掘るのが一番。タケノコ本来のおいしさは、こうして初めて味わえるのです」

通常サイズと高級料亭向けの大きさの違い(写真提供:若山農場)

といっても、自分で掘った後、どうやれば美味しく食べられるのか。

「タケノコのあく抜きって面倒くさいイメージがあるじゃないですか。皮ごと糠とトウガラシを入れたお湯で長時間煮るという。でも実はもっと簡単な方法があるんです」

一般的に知られたやり方は間違いだと断言する若山さんが言う方法は、まさに新常識だった。

「まず皮をがばっと全部むく。何も入れないたっぷりの水にただ沈めて沸騰させて煮るだけ。そのまま鍋に沈められない大きさだったら、切っちゃっても構いません。タケノコのえぐみの正体は、ホモゲンチジン酸。皮を(全部)むくのは、皮のままだと、ホモゲンチジン酸が水に溶け出しにくくなるからです。その日に掘ったものなら20~30分で十分。スーパーの店頭のものでも40~50分であくは抜けます」

糠やとぎ汁を使わない理由は、それらのにおいが移ってしまいタケノコ本来の香りが楽しめなくなるため。確かにこの新常識なら、タケノコを煮るのが面倒くさいという人を減らせそうだ。

「料理本のレシピは、なぜか余計な手間を読者に押しつけてしまうことがあります。かといってph調整剤を使っているタケノコの水煮では、本来の香りと食感は楽しめません。水煮のタケノコを嫌う子どもは結構いるんですよ。こうして煮たタケノコなら大喜びするのに。

タケノコはどんな煮物に使っても、煮物もタケノコ自体もどっちもおいしくなる。どんな煮物でも構いません。余ってしまった味がしみたタケノコはそのまま天ぷらにすれば、絶品料理に変身します」

(写真提供:若山農場)

若山農場ではなんと、おいしいタケノコを一年中楽しんでもらうことを目的に、この水でただ煮ただけのタケノコの瓶詰めを商品化している。

「『こんな水煮の瓶詰なんて誰も買わないよ!』。お付き合いのあるバイヤー全員にこう言われました。でも、飛ぶように売れてるんですよ。旬の味を一年中楽しみたい人が多くいらっしゃる証拠です。おかげ様で次のシーズンの収穫が始まる前に、直販のみで全量売り切れてしまいます」

「いつか竹やぶすら宝の山に変わる」と語る若山さん。「竹害」などと呼ばれ嫌われ者になりつつあるタケの未来が、明るい方へと変わっていくことを願ってやまない。

竹下 大学 品種ナビゲーター

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たけした だいがく / Daigaku Takeshita

1965年東京都生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、キリンビールに入社。新規事業としてゼロから花の育種プログラムを立ち上げ、プロジェクト中止の決定を乗り越えて同社アグリバイオ事業随一の高収益ビジネスモデルを確立。2004年には、All-America Selectionsが北米の園芸産業発展に貢献した育種家に贈る「ブリーダーズカップ」の初代受賞者に、ただひとり選ばれる。技術士(農業部門)。著書に『植物はヒトを操る』(毎日新聞社、いとうせいこう共著)、『東京ディズニーリゾート植物ガイド』(講談社、監修)、『日本の品種はすごい うまい植物をめぐる物語』(中央公論新社)、『野菜と果物 すごい品種図鑑』(エクスナレッジ)等。

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