倒幕の原点あっさり捨てた「西郷隆盛」驚愕の本音 味方すら衝撃を受けた新政府「開国」方針の真相

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慶喜を新政府のメンバーに取り込もうとしていた岩倉からすれば、旧幕府軍と全面対決することに恐れを抱いていた。不安がある岩倉に、中村はこう返答したという。

「彼らは烏合の兵ばかりでありますから、薩州軍だけで十分であります。ご心配はいりませぬ」

心強い言葉にとりあえずは安心した岩倉だったが、新たな不安が頭をよぎる。中村にさらに質問を重ねた。

「この戦いが終わると、攘夷をせねばならぬが、その手配はできるか」

政権を奪えば、今度は幕府ではなく、自分たちが外国と対峙しなければならなくなる。大久保はこれまで何度となく幕府を見切るべく朝廷をけしかけてきたが、工作が失敗に終わった理由がここにある。

朝廷からすれば、欧米諸国と渡り合うべく対応をすることだけは避けたかった。このときの岩倉の不安にも、そんな逃げ腰の朝廷の体質が露呈しているといえよう。

岩倉具視を驚かせた中村の答え

だが、中村の答えは岩倉を驚かせるものだった。不安がる岩倉に対して、中村は平然とこう言ったのである。

「攘夷などということは、御前の口からお出しになさるものではござりませぬ。これは倒幕のための口実。その実、決して攘夷をするのではなく、かえって世界各国と交通して西洋の長を知り、わが国の短を補い、ますますわが長を発揮して、帝国の威光を宣揚せねばなりませぬ」

このやりとりを聞き逃さなかったのが、薩摩藩士の有馬である。有馬は異国を嫌っており、攘夷を信じてここまで倒幕に力を貸してきた。いったいどういうことなのか。有馬が西郷のもとを訪ねると、西郷の口から、こんな真実が明かされることになる。

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