「人見知り」でも「人脈のつくり方」を学ぶべき理由 「800人超」から得た知見を体系化、形式知化

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まずは自分自身の現時点の「ネットワーキング・レベル」を知り、自分のレベルに応じて、一段階ずつレベルを上げていくための具体的行動につなげていくとよい。

例えば、現在、起業家をサポートする企業でコミュニティー・ディレクターを務めているBさんは、ベンチャー界隈での人的ネットワークのハブとなり、さまざまな人材をつなげることで価値創出を行っている。周囲の起業家からは「何か困ったらまずBさんに相談しよう」と頼られている存在であり、自身の人的ネットワークにおいて人と人をつなぐことで新事業の創造を誘発している。

しかしBさんも、大企業勤めをしていた数年前はネットワーキング・レベル0であった。最初は飲み会や勉強会に参加するなどの行動を通じて人的ネットワークの価値に気がつき、時には失敗もしながら一歩ずつネットワーキング・レベルを段階的に成長させてきた。

現在は広報のプロとして認知が拡がっているMさんは、これまでの実績・キャリアを軸として、さまざまな人からビジネスの機会などを得るようになっている。しかし、スタートラインでは広報のスキルも知名度もゼロの状態であった。若い頃からいろいろなコミュニティーに飛び込み、広報のスキルを磨き、自身の活動や志の発信をすることで一歩ずつネットワーキング・レベルを成長させてきた。

コミュニティーの真ん中に入る

「ネットワーキング・レベルを上げていく」を、別の言葉で表現すると、「ネットワークの集合体であるコミュニティーの中心に入る力を上げていく」ことだ。

では、なぜそのようなネットワークやコミュニティーが必要なのか。それはシンプルに「世の中に自分1人でできることは何ひとつない」からだ。価値のあるネットワークやコミュニティーを獲得しなければ、いくら志を掲げたところで、それは絵に描いた餅になってしまう。

そして、コミュニティーの真ん中に入るということが、ネットワーク構築への「てこ」になるということを体感してほしい。もし人的ネットワークの構築が自分は苦手と思う人がいるならば、そういう人ほど、自分をプッシュしてエネルギーを割いてみてほしい。見える景色が変わり、自分が想像もしなかった世界が見えてくる。

つまり、「人は人によってのみ磨かれる」。磨いてくれる人たちが周りにいるかどうかが。いいネットワーク、そしてコミュニティーを自らつくることができるか、もしくは誰かがつくっているいいコミュニティーに属せるか、が人生の質を決めることになる。

ぜひともコミュニティーの真ん中に入り、その中で良質な人的ネットワークを構築してほしい。

田久保 善彦 グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長

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田久保 善彦 / Takubo Yoshihiko

慶應義塾大学理工学部卒業、学士(工学)、修士(工学)、博士(学術)。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所を経て、現在グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長。経済同友会幹事、上場企業およびベンチャー企業外取締役等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』(東洋経済新報社)等、多数。

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