大団円の「カムカムエヴリバディ」が意外に罪深い訳 朝ドラに張りめぐらせた“伏線回収"は薬か毒か

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最後にあらためて「カムカムエヴリバディ」の作品全体を振り返ると、「3世代にわたる100年間の物語をトリプルヒロインが演じる」というコンセプトの挑戦作でした。

これは裏を返せば、「100年間の長きにわたる物語だからこそ、大量の伏線を張りめぐらせやすく、回収しやすかった」ということ。つまり、「数十年後にこの人とこの人を出会わせて……」などとパズルを作るような作業がしやすいコンセプトなのです。

「ちむどんどん」以降への影響は必至

しかし、5カ月あまりの放送で100年間を描くためには、急展開の連続が必要。実際、たびたび視聴者から「ここはもっと見たかったな」「ここはスキップでもよかったのに」「あれ?これは何年後だろう」などの声が上がっていました。「登場人物の人柄や感情を描くことより、大きな展開を優先させて、早く次に進めなければいけない」という制作サイドの難しさを感じさせるシーンが何度もあったのです。

それでも「カムカムエヴリバディ」は、1人ひとりの人生や何気ない日常の素晴らしさ、人と人のつながりや縁、日本人女性の自立などを時代の変遷とともに描いた素晴らしい作品でした。これは制作サイドのスキルと努力によるものであり、キャストの好演も含め、称賛に値するところでしょう。

ただ、かつてはそれらだけで視聴者を感動させ、熱狂を生み出すことができたことも事実です。今回、制作サイドが「大量の伏線とその回収」という麻薬を使ったのは、ドラマ業界のトレンドに乗ったからなのか。それとも、「それがなければ見てもらえない」という不安があったからなのか。

いずれにしても、麻薬のような魅力を朝ドラの視聴者が知ってしまったことで、次作の「ちむどんどん」、次々作の「舞い上がれ!」、次々々作の「らんまん」への影響は必至。これらの作品も、大量の伏線とその回収を使わざるをえない状況になっていくとしたら、のちに「カムカムエヴリバディ」の功罪があらためて問われるのではないでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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