大団円の「カムカムエヴリバディ」が意外に罪深い訳 朝ドラに張りめぐらせた“伏線回収"は薬か毒か

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そもそも同作は、“3人の主演女優がつなぐ100年間のファミリーヒストリー”という斬新なコンセプトの朝ドラ。思い切って攻めた作品だけに、収穫と課題、さらに言えば、功罪や是非を問われるようなところもあったのです。

ヒロイン3人が時代を超えてシンクロ

中盤以降、SNSとウェブ記事に、「見事な伏線回収」などの称賛フレーズが何度となく書き込まれました。

「カムカムエヴリバディ」は、「あんこのおまじない」や「ラジオ英語講座での学び」が安子、るい、ひなたの3世代にわたって引き継がれたことを筆頭に、安子と雉真稔(松村北斗)が聴いていたルイ・アームストロングの「On the Sunny Side of the Street」が、のちに生まれる、るい、ひなたの名前につながったこと。安子、るい、ひなたが店番をしていたときにそれぞれ運命の男性となる雉真稔、大月錠一郎、五十嵐文四郎と出会い、その後も夏祭りを楽しむシーンをシンクロさせたこと。

その他でも、岡山の戦災孤児が大阪のトランぺッター・大月錠一郎に成長していたこと、「安子編」で斬られ役だった伴虚無蔵(松重豊)が、「るい編」では大役に抜てきされ、「ひなた編」ではヒロインの師匠的な存在になったこと。るいと錠一郎が見た映画『妖術七変化!隠れ里の決闘』がのちに息子の2代目桃山剣之介(尾上菊之助)によってリメイクされ、文四郎らが出演したことなど、100年間にわたる長い年月を丁寧につなぐことで視聴者を引きつけてきました。

また、るいと安子が生き別れる前に放った「I hate you」が、再会時に「I love you」に変わるクライマックスのシーンは、その最たるところでしょう。藤本有紀さんの手がけた大胆さと繊細さ、ダイナミックとデリケートを併せ持つ脚本が、同作の盛り上がりを牽引してきたことは間違いありません。

次ページ残り1カ月あまりから視聴者の間に微妙なムードも
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