大団円の「カムカムエヴリバディ」が意外に罪深い訳 朝ドラに張りめぐらせた“伏線回収"は薬か毒か
実際、昨秋から「最愛」(TBS系)、「真犯人フラグ」(日本テレビ系)、「愛しい嘘~優しい闇」(テレビ朝日系)と、大量の伏線を張りめぐらせて考察を促すミステリー&サスペンス作が次々に放送されたことからも、それがわかるでしょう。
「伏線回収」は麻薬のようなもの
ではミステリーやサスペンスではない朝ドラにおける伏線回収はどうなのか。これまでも大半の作品で「伏線」とその「回収」が行われてきましたが、今回のように大量の「伏線回収」を仕掛けた作品は記憶にありません。その意味で制作サイドは明らかに「一風変わった朝ドラを見せよう」としていたのです。
ネットユーザーを中心に、「登場人物たちの人間ドラマよりも、伏線回収にカタルシスを感じる」という人が増えているのは疑いのようのない事実でしょう。さらにそんな人々の閲覧を狙ったネットメディアの「伏線回収」関連記事も増えています。
しかし、大量の「伏線回収」は見ているときこそネット上で盛り上がれる反面、「終了後は記憶に残りにくい」という傾向がある諸刃の剣。その理由は、本来の魅力である登場人物の感情より辻褄合わせを優先させるからであり、冷静になったとき、制作サイドの作為に気づいてしまうからです。実際、大量の伏線回収で盛り上がったけど、放送後に「『制作サイドに踊らされていたな』と感じて醒めてしまう」という作品がいくつかありました。
ドラマにおける伏線とその回収は、たとえるなら麻薬のようなもの。ワーッと盛り上がれますが、その熱がサーッと引いてしまうのも早く、別の作品で「またそれがほしい」「ないと物足りない」と思ってしまう……。その意味で「カムカムエヴリバディ」は春以降のドラマに「伏線回収」という影響を与えるのではないでしょうか。
もちろん視聴者はドラマを好きなスタンスで見ればいいのですが、問題は制作サイドがその影響を受けすぎていること。近年、民放各局のドラマが、ネット上の話題性を高め、視聴率を獲得するために、大量の伏線とその回収に注力していました。「カムカムエヴリバディ」は、そんな民放のトレンドが公共放送のNHKと朝ドラにも及んでいることが明らかになった作品と言っていい気がするのです。
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