大団円の「カムカムエヴリバディ」が意外に罪深い訳 朝ドラに張りめぐらせた“伏線回収"は薬か毒か

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しかし、放送期間が残り1カ月あまりになったころから、視聴者の間に微妙なムードが生まれはじめていました。実家の和菓子屋「たちばな」の再建資金を持って失踪した安子の兄・算太(濱田岳)が、ひなたの働く映画村に偶然現れる。さらにその算太が病死したことで、るいは岡山への帰郷を決意し、生き別れた安子への思いを深くする。その後、ハリウッド映画の製作でキャスティングディレクターのアニー・ヒラカワ(森山良子)がひなたの働く映画村に偶然現れる。そのアニーは安子であり、ためらいながらも、るいと感動の再会を果たす……。

安子とるいの再会に感動できない理由

算太と安子が立て続けに「偶然、ひなたの働く映画村に現れた」こと、「るいが不義理を続けていた岡山の雉真家へ突然行った」こと、「和菓子を作っていた安子がキャスティングディレクターになっていた」こと、「ひなたが忙しいアニーに遠い岡山のライブチケットを渡した」ことなどに、「ちょっと強引では?」「無理やり伏線回収しようとしている」などと疑問の声が上がりはじめたのです。

とりわけアニー・ヒラカワが登場した最後の2週間あまり、制作サイドが“におわせ”のシーンを連発したことで、視聴者の注目は「アニーは安子なのか、安子ではないのか」に集中し、それは残り3話となる段階まで続きました。「あさイチ」の朝ドラ受けで鈴木奈穂子アナが「安子かなと思った」、博多華丸・大吉が「安子じゃないでしょ」と意見が分かれていたことも、それを象徴しています。

「大事なクライマックスで『アニーは安子なのか』で引っ張りすぎ。私たちはそんなことを求めていたわけではない。安子の悲劇と、るいの誤解がどう解消されていくかをじっくり見たい。再会してからのことをしっかり描いてほしかったのに、終盤は回収ばかり」
「最終回まで見ないとわからないですが、アニーが安子かどうかに興味が集中する謎解きの考察ドラマになってきたのが寂しいような。視聴者の興味を引く工夫は連続ドラマとしては必要不可欠でしょうが。思えば安子編るい編は違うテイストですがロマンチックだったなと思います」
「アニーが安子かをこんなに引っ張るなら安子だとすぐわからせて、ひなたにあのころの安子の気持ちを語らせてほしかった」
「安子編とるい編は割と朝ドラの王道だったのに、ひなた編になってからはほとんどが伏線回収になってしまった」
次ページネット上に増えてしまった不満の声
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