審査や再稼働の妥当性に疑問の声も根強い。川内原発の審査で焦点となったカルデラ噴火の影響に関して、日本火山学会の専門家は、巨大噴火の前兆把握が可能とする前提に立った規制委の審査を批判している。原発30キロメートル圏内の自治体が策定する緊急時の避難計画は、いまだ多くの不備が指摘され、規制委の審査対象外であることも問題視される。
また、川内原発から最短5.4キロメートルで、市民の半数以上が再稼働に反対署名している、いちき串木野市の議会は、同市を地元合意の範囲に含めるよう要求。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は地元同意の範囲を、「(九電と安全協定を結んだ立地自治体である)県と薩摩川内市で十分」と繰り返し述べているが、法的根拠はない。再稼働のハードルを上げることになる地元範囲の拡大については、国も判断を避けている。
一方、周辺住民らが再稼働差し止めの仮処分を申請しており、鹿児島地方裁判所の判断によっては再稼働できない可能性も残る。
高浜は地方選の争点避け、地元合意を後回し?
川内の次に審査が進んでいるのが、関西電力の高浜3、4号機だ。関電は2014年12月1日に設置変更許可申請の補正書を再提出。同月17日には、規制委が新規制基準に適合しているとする審査書案を了承した。その後、1カ月間のパブリックコメント募集(意見公募)を経て、審査書が確定すれば実質合格となる。
ただ、その後も地元合意や工事計画および保安規定の認可手続きに加え、追加の安全対策工事も残る。基準地震動(想定する地震の揺れ)を引き上げた結果、関電は約500カ所に上る耐震補強工事や取水口の防潮ゲート、放水口の防潮堤などの工事を行っており、完成時期は未定。「(2015年の)夏までに動かしたい」(八木誠社長)意向だが、なお流動的だ。
2015年4月には、立地自治体である高浜町の議会や福井県の議会、知事の改選を含めた、統一地方選を控えている。高浜原発から30キロメートル圏内で、再稼働に慎重論が強い京都府や滋賀県でも議会選がある。再稼働問題が選挙の争点となるのを避けるために、地元合意手続きが選挙後に先送りされる可能性がある。
高浜3、4号機に関し、関電は「再稼働時時にMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を装荷したい」(八木社長)としており、使用済み燃料を再利用するプルサーマル発電に対し、周辺自治体を含めて懸念の声が高まる公算もあろう。
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