電事連会長「何としても原発再稼働実現へ」 再稼働なければ「発送電分離の延期も」と注文

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関西電力は電力料金の大幅値上げを申請中。「高浜原発が再稼働したら、値下げを検討」と(ロイター/アフロ)

電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は1月23日、今年最初の定例会見を開き、「昨年は原子力発電所がまったく稼働しなかったが、今年は何としても早期の再稼働を実現したい」と、原発再稼働の「成果」を勝ち取る決意を強調した。

電力システム改革の第3段階に当たる発送電分離の法案が今通常国会で審議されることについては、発送電分離の前提として「電力の安定供給の補完や原発再稼働による需給状況の改善、原子力の事業環境整備が必要」と主張。これらがうまくいっていない場合は「(2018~20年をメドとする発送電分離の)実施時期の先延ばしを含めて柔軟に検討してほしい」と注文を付けた。

大手電力会社は、送配電部門が分離されることによる経営悪化を警戒している。「競争環境の中で原子力をこれからも民間が担っていくためには、健全な経営が必要」(八木氏)とし、政府に対して電力会社の負担を軽減する措置を要求している。特に求めているのが原子力のバックエンド(廃炉、廃棄物処理、核燃料再処理)事業における負担軽減であり、経済産業省が方針を決めた廃炉会計制度の見直し(一括減損処理の負担軽減)もその一つ。核燃料サイクル事業でも国と事業者の負担見直しを強く求めている。

電源構成で原子力の一定規模確保を要求

経産省が最適な電源構成(エネルギーミックス)の議論を開始することに関して八木会長は、「資源に乏しい日本の実情の中で、現実的かつバランスのとれた将来像をすみやかに検討してもらいたい」と要請。「原子力はS(安全性)プラス3E(環境性、経済性、エネルギー安全保障)の視点からバランスに優れており、将来にわたって一定程度の規模を確保していただきたい」と述べた。具体的な原子力の電源構成比率については明言を避けたが、2割以上を想定していると見られる。

昨今の原油安が電気料金に与える影響については、「原油価格連動の液化天然ガス(の調達)が多い。燃料価格の低下は燃料費調整制度を通じて数カ月のタイムラグを置いて電気料金に反映される。ただ、電気料金には円安も含めてトータルで影響するため、引き続き注視する必要がある」と述べた。

一方、運転開始から40年を経過した老朽原発7基を廃炉にするか、運転延長申請するかの判断については、関電保有の4基を含め「いぜん検討中」とした。関電の高浜1、2号機は現在、運転延長申請の条件となる特別点検を実施中にあり、いずれ延長申請する公算が大きい。残りの5基については出力規模が比較的小さいため、廃炉の可能性が高いと見られるが、保有各社はなお最終判断を先送りしている。

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