「日本人は、衆知を集める国民やね」

神代から変わらぬ独断専行を嫌う国民性

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

  

昭和49年、暮の秋、この頃は、確か、読売ジャイアンツの長嶋茂雄さんが引退したことで、大いに紙面を賑わしていたことを覚えている。田中角栄元首相が、ロッキード事件で11月26日に辞任表明、12月9日に三木内閣が発足している。

日本人は衆知を集める国民なんやな

松下幸之助は、仕事を終えて、帰宅する前のひととき、疲れを感じないのか、饒舌に話し始めた。

「いつも、わしが、多くの人の知恵を集めんといかんということを、言っておるけどね。けど、まあ、これは、わしの専売特許でもなんでもない。もともと日本人は、こういう、衆知を集める国民なんやな。きのうの夜な、ある人からもらった本を、読んどったんやけど、そういうことが書いてあるんや。

神話にも書いてあるそうや。イザナギ、イザナミという神さんの間に、子どもがうまくできん。で、どうするかというとね、その神さんが2人して、天つ神々のところへ相談に行く。どうしたらいいんかと。そうするとな、面白いことに、天つ神々が、占いをするんや。占いをするということは、神様たちが、また、誰かに相談しておるということやわな。結局、日本の神様には、究極の神様が、存在しないという、そういうことらしいけど、このことは、日本では、多くの人たちが知恵を集めて、事を決めていくということを言っておることにもなるな。

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また、八百万(やおよろず)の神々の共同生活が、古事記に書かれているそうやけど、神さんたちが、つねに衆議によってというか、神さんたちの知恵を集め相談しつつ、物事を決め、取り行っている。天照大神は最高位の神さんやろ。けれども、専断、専行しておらんわね。こういう傾向は、日本人が、なにかを行う場合は、いつも衆知を集めてやってきたことを示しておるのではないかと思うな。

仏教を入れるときもな、これを取り入れるべきかどうかは、自分ひとりで決めるわけにはいかんと、時の天皇さんが考えて、人々に是非をはかっておるわね。いろいろなこともあったけど、そこで初めて、仏教を取り入れておる。

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