部下にものを尋ねると、部下は成長する

経営者が威張るのは損

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

ある年の1月も終わりの頃だったように覚えている。この時、松下幸之助は、ホテルで某新聞記者の取材に答えていた。

「まあ、そうですな、会社を経営していくにあたっては、やはり、いろんな人の声を聞かんといかんですな。外の人の話も聞く。社内の人たちの話もよう聞いていく。そういうなかで、おのずと、せんならんこと、やらんといかんことが出てきますわな。人の言うことに耳を傾けていくことが、経営をしていくにあたっては、大事なことですな。けど、そのときに心掛けんといかんのは、素直になってというか、素直な心ですな。とらわれて聞いておったら、大切なことを見過ごしてしまいますからね。それじゃ、あきませんわ」

とにかく、松下は、事あるごとに、ほとんど誰彼となく、周囲の人に、話しかけ、問いかけ、尋ねる、ということが多かった。

「きみはどう思う?」

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もちろん、私も、さまざまなことについて、質問された。思案していること、確認したいこと、わからないことなど、それが、松下との会話のなかでの普通のやり取りであった。テレビを観ながら、「今、この人が言ったことは、どういうことか。きみは、どう思うか」という問いかけなどは、ごく当然であったが、年明けて、いつものように正月5日の夕方の呼び出しで、訪ね、2人でおせちを食べていると、「今度、(松下電器の)社長を交代させようと思うんやけどな、この人がいいと思って考えているんや。きみ、この人をどう思うかなあ。人望もあるしな。わしの考えもよく理解している」と、そういうことを尋ねられることもあった。

しかし、新社長は、理由は控えるが、松下の考えていた人には、ならなかった。そういう、こちらが、なかなか答えにくい質問もあったが、とにかく、私事から、会社のことはもちろん、政治、経済、社会、教育など全般にわたって、なんのためらいもなく、松下は、質問をしてきた。

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