「日に新たやね、旧態依然はあかん」 今日は、昨日のままであってはならない

✎ 1〜 ✎ 22 ✎ 23 ✎ 24 ✎ 最新
拡大
縮小
昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

 何かの本だったろうか、しかし、記憶にないから、雑誌だと思うが、米国の漫画の話が載っていた。

ある新婚の夫婦が家庭で、感謝祭のためにローストターキーをつくっていた。夫が見ていると、妻が七面鳥のお尻の部分をバッサリ切り落として、オーブンに入れている。夫は不思議で仕方がない。丸ごと入れればいいのに、どうして、そんなもったいないことをするのだろうと思った。そこで、妻に聞くと、「お母さんから、教えてもらったの」と言う。

しかし、夫の、不思議な思いは消えない。そこで義母に電話をした。「ハッピー・サンクスギビング」と挨拶をしてから、「あのぉ、つかぬことをお伺いしますが……」とその理由を尋ねたら、「あゝ、それは、おばあさんから教わったの」と。

そこでおばあさんに電話をした。「なぜ代々、ローストターキーのお尻を切り落とすのですか。その理由を教えて頂けないでしょうか」と問い合わせた。すると、それを聞いたおばあさんが、驚いた声で「なにしてるのよ。馬鹿だねえ。それは私のオーブンが小さかったからよ。今、あなたのところの オーブンは、大きいから、丸ごと、入るでしょう」。そういった内容であった。

漫画だから、もちろん、作り話だろうが、あんがい作者の身近なところでの実話かもしれない。

同じ仕事の繰り返しはいかんよ

当連載の関連書籍「ひとことの力」は好評発売中です。上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

この話を覚えているのは、この話を読んだ直後に、松下と話をしていると、

「きみ、仕事をしてるわな。毎日、会社に行くやろ。けど毎日、同じ仕事の繰り返しではいかんよ。早い話、毎日、昨日はどうであったか。今日は、昨日より、進んだ姿で仕事をしているのか。そういうことをつねに考えんといかんな。

日に新た、というやろ。そうでないと、きみも成長せんし、会社も発展せんな。こういうやり方が、昔からのやり方だからとか、先輩がやっていたからとか、そういうことではダメやな。毎日、毎日、新しく変化しておるいうか、今やってることが、これでいいのか、こういう考え方でいいのか、つねに考えながら、仕事をせんといかん。

とにかく、日に新たやね。旧態依然ということであっては、あかんということや」

と言われたからである。

先述のローストターキーの話を読んだ後であったから、松下のこの一言は、印象に残っている。昨日と同じ仕事、やり方をするな、ということである。

次ページ「日に新たに」を語るエピソードとは?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT