経営は「自分をしっかり持って取り組む」 日本の伝統精神を心においた経営を

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昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

松下幸之助が、何度も同じことをいう場合がある。多くの人が、またかというような表情をするし、松下と時折しか接触しない松下電器の幹部の中には、松下が80歳代になると、ボケが始まったのではないかと陰口を言うようになった。もちろん、最期までボケていなかったことは、主治医の横尾定美院長が書いた『心身一如―松下幸之助創業者に学ぶ健康哲学』のなかの「創業者逝く」の項を読めば、すぐわかる。

松下の、本質を理解させたい思い

何度も同じことを言うのは、相手に教え込みたい、血肉にさせたい、言葉だけの理解ではなく、本質を理解させたいなどという、そのような思いから、同じ話をすることは、つねに側にいた私は、よく理解していた。

松下が、同じことを繰り返して言ってくれることは、私にとっては、好都合であった。なぜなら、松下が、いま、そのことにいちばん興味を持っていることがわかるし、いちばん私に言いたいこと、取り組んでほしいということなどが、わかるからだ。だから、それに気をつければいいし、取り組み、結果を出し、報告をすればいいということになる。

ほかを頼るな、自分の足で歩け、自分を、しっかりつかんで、自分を捨てたらダメだ、自主自立の心持ちがなければ、指導者、経営者として失格である、などは、正直、100回以上は、聞かされていたのではあるまいか。従って、私は、PHP総合研究所の経営を、自主独立の気概で取り組んでいったし、松下幸之助にすら、頼みごとは、いっさいすることはなかった。

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ある日も、同じように、経営は、ほかに頼るようなやり方はあかんよ、と言う。しかし、自分の経営経験からの話ではなく、まったく、いつもと違った「自主自立論」を話し出したから、印象深く覚えている。

「自分をしっかり持って仕事に取り組まんといかんよ。そういう心がけが、経営には大事や。自分をしっかり押さえて、周囲の意見を取り入れつつ、経営をしていかんとあかんな。

だいたい、日本という国がらがそうや。外国から、さまざまな文化を取り入れたけれど、日本らしさというか、本来の日本たるところのものは決して失わんわね」

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