「TOTOトイレ開発100年」が日本人を変えた! いつから座ってお尻を洗うようになったのか

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海外展開の商品。左は斬新なフラットデザイン。右はイタリアのデザイナーによる

海外展開では、乗り越えなければいけない壁がいくつもある。最も大きいのは、電気の問題だという。「水回りに電気製品を置くということが、海外の場合は規格にない。許可取りまでに時間がかかります」。

生活様式や考え方の違いも大きい。「欧米はバス、洗面所、トイレの3点セットが主賓室、ゲスト部屋、子供部屋にそれぞれにあって、1軒の家に複数あります。だからトイレにそんなにおカネをかけられない。欧米では幼い頃から家の中でも独立して過ごし、もともとひとりなので、プライオリティはひとりになれる場所ではない。欧米のリフォーム番組などを見ていると、みんなが集まるリビングにおカネをかけています」。

アジア向けの「エコウォッシャー」。電気を使わず水で洗浄する便座

そして、経済状況。「アジアの国々の低所得者層は高いトイレを買えない。ヨーロッパも実はそうで、貧富の差が圧倒的に広がっています」。

そこで、まずはTOTOの便器を5つ星ホテルや空港、駅などに設置して顧客接点を増やし、ブランド認知を高めることを主眼に置いている。「まずは便器を使っていただきたい。『ウォシュレット』の普及はその後。わが社はビジネスサイクルがとても長く、30年スパンで考えています」。

時代の追い風に乗らなければならない

便器を買い替えるスパンは数十年単位だ。日本人も一生のうちに何回便器を買うかを考えてみるとわかる。家を購入するときに買って、その後、一度も買い替えない人もいるだろう。しかも、日本で普及が進んだ背景には、日本人の「清潔好き」と「技術力の高さ」も要因だが、高度経済成長とバブルという時代の追い風があった。

「回転が遅いということは、出合う機会が少ない。経済が発展し、新しい建物がどんどん建っていくときが数少ないチャンス。海外市場のそうした貴重な機会にきちんと入っていって、多くの人によさを体感してもらうことが重要です」

その意味で、2020年の東京オリンピックは、世界中の人が東京にやって来て、最先端のトイレと出合う絶好のチャンスだ。個室に入ってから出て行くまで、“温かく”至れり尽くせりのおもてなしをする。外国人に驚きと感動の“渦”が巻き起こるに違いない。

上田 真緒 ライター、編集者

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うえだ まお / Mao Ueda

ビジネス誌、ビジネス書の編集者・ライター

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