そして、水の流し方に大革命を起こしたのが、2002年の「トルネード洗浄」だ。それまで便器の縁から滝のように水を流していたのが、真横に水を流した。ぐるぐる渦を巻きながら便器ボウルの中を長く回る。このまったく新しい発想によって、より少ない水できちんと洗い切れるようになった。
現在、最新型「ネオレスト」は1回3.8リットル。業界最少である。「数年前から、ヨーロッパの展示会にTOTOも出展していますが、ヨーロッパのトイレメーカーがトルネード洗浄を見て、“トルネードもどき”の流し方に変えているようです」。まさにTOTOが世界のトイレの“流れ”を変えたのだった。
トルネードはトイレ掃除にも革命を起こす。便器の縁そのものが消滅したことにより、それまで便器の縁に付着した頑固な汚れと格闘してきた多く人々が解放されたのだ。トイレ掃除を家庭や職場で担っている人にとっては、こちらのほうが歴史に刻むべきイノベーションだろう。
「便座」の進化、いかにお尻を洗うか
次は「便座」の進化である。
TOTOが誇る「ウォシュレット」の発売は1980年。今から34年前だ。しかし、お尻を洗う機能がついた便座は、TOTOが初ではない。1964年、今から50年前に、米国のアメリカン・ビデ社の「ウォッシュエアシート」をTOTOが輸入・販売した。「これは医療用の製品。紙で拭くのが痛い痔の方や体格がよすぎて拭きにくい方のためのものでした」。
TOTOはまたしても国産化に取り組み、1969年に洗浄・乾燥機能と暖房便座機能をつけた「ウォッシュエアシート」を発売する。だが、お湯の温度が安定しない、当たる角度がよくないなど、まだまだ作りが荒く、クレームもあった。
1970年代に入り、オイルショックが起きて景気が低迷する。何か新しい商品を仕掛けていかなければいけないという機運が社内で高まり、1978年11月に「ウォッシュエアシート」を一から自社開発することが決定した。
しかし、ここでも個室で使うトイレならではの困難が立ちはだかる。「まずお尻の位置がどこに来るかデータすらない。社員のモニターに自分の肛門の位置がどこに来るか、便座に取りつけた針金の上に印をつけてもらった。総勢300人のデータから大人の平均値を出しました」。
さらに、お湯の温度、当てる角度の試行錯誤を続け、温度は38度、角度は43度という「黄金律」が導き出された。こうして1980年6月、開発期間わずか1年半で「ウォシュレット」が誕生した。
1982年、「おしりだって、洗ってほしい」のCMで一躍、世間に認知される。だが、必要とされるまでには至らなかった。
「紙で拭けば十分なのに、なんでわざわざお湯で洗わないといけないんだという声が大半でした」。和式から洋式への切り替えに長い期間を要したように、やはり慣れ親しんだスタイルからの変化には抵抗があったのだ。
「抵抗感を払拭していくには、実際に使ってもらい、よさを実感してもらうのがいちばん。実体験できるキャラバンカーで全国を回ったり、トイレを設置する水道工事店の方に使ってもらい、お客様に実感を込めて薦めていただくなど、地道な活動を続けました」
その間にも、トイレにさまざまな機能が搭載されていく。
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