「TOTOトイレ開発100年」が日本人を変えた! いつから座ってお尻を洗うようになったのか

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「ウォシュレットQUEEN」

1987年、「究極のトイレ」をテーマに、便座と便フタのソフトな閉止機能、ノズル位置の調節、消臭機能、リモコン操作機能などがついた「ウォシュレットQUEEN」を発売。まさに“女王様”のごとく、用を足せる仕様だ。

バブル景気に沸く中、高級感と先進機能を備えたトイレが求められ、この年、ウォシュレットの販売累計台数は100万台を突破した。

1990年代に入り、日本経済は失速していったが、ホテルやデパート、レストラン、オフィスなどの公共スペースに急速に広がっていく。グレードの高いトイレを設置すると、お客様の評判がよく、顧客サービスにつながることが認知されていったからだ。1998年、ウォシュレットの販売累計台数は1000万台を突破した。

閉塞感が漂う中も消費者の心を、お尻を、的確に狙い撃ちする。1999年、お尻を洗う水の出し方を劇的に変える「ワンダーウェーブ洗浄」を開発。しっかり洗えて、かつ節水と節電を図るため、水を瞬間的に加熱し、玉状に連続吐水する。それまでの3分の1の量で洗えるようになった。

便座の節電効果も図った。人の動きをセンサーが感知し、使うときだけ素早く便座を温める「瞬間暖房便座」、断熱材を入れた便座と便フタ、便フタの閉め忘れがない「オート開閉」機能を搭載。省エネ化を高めた。

脱臭機能の進化も止まらない。今やトイレに入った瞬間にセンサーが検知し、脱臭を開始。使用後、便座から離れるとさらに強力に奪取する「オートパワー脱臭」が搭載されている。もう、ほぼどこにも触れずに用が足せる。

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「ウォシュレット」累計出荷台数

出荷台数1000万台突破までは、発売から18年かかったが、2000万台を突破したのはそれから7年後の2005年1月、3000万台を突破したのはその6年後の2011年1月と、普及が加速していった。

ちなみに、和式の出荷がまだ1%あるのは、当然ながら需要があるからだという。「洋式は腰掛けるときに太ももが便座に触れるので、それが嫌だという人もいます」。

「便座」が「便器」を洗うところまできた

「きれい除菌水」

このように「便器」と「便座」は別々に進化してきたのだが、2012年、「便座」が「便器」に対して初めて施しを加える機能ができた。「ウォシュレット」最上位モデルの「きれい除菌水」だ。水道水を電気分解した除菌効果のある水のミストをノズルと便器ボウルの中に吹きかける。「便座」が「便器」を洗ってくれるわけだ。

他社のシャワートイレ商品を含めた「温水洗浄便座」の普及率は、2014年3月現在、約76%(内閣府の消費者動向調査)。国産「ウォッシュエアシート」の発売から45年、「ウォシュレット」の発売から34年でようやく7~8割に達した。

海外展開の課題は?

そこで気になるのは、海外のトイレである。TOTOが海外市場に初めて出たのは1977年。インドネシアに合弁会社を設立し、海外の生産拠点として工場を作った。中国と米国には1980年代に進出したが、「世界各国での本格普及にはそうとう長い期間を覚悟しています」と同社広報部の山下名利子さんは話す。

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