NHKアナから「職人の道」へ彼女のただならぬ決意 「年齢を重ねることを喜べる生き方がしたい」

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伝統工芸は「一生成長」、「死ぬまで未熟者」などと言われる世界。特に経験が浅い頃は、成果や評価を実感として得にくい。梶浦さんも自分ではある程度、上手になったつもりでも全く商品として売れない時期があった。「それが途方もなく苦しくて。このまま続けていけるのか、不安で押しつぶされそうになりました」。

だが「このままではいけない」。そう思い立ち、梶浦さんは行動する。

まず、作品だけで注目してもらえるほど世間は甘くないのだから、もっと自分を前に出していこうと決心。働く女性を応援するコンテストで1位を取るなどして注目を集め、「根付職人・梶浦明日香」として知名度を上げていった。

伝統工芸の異業種グループを立ち上げた

また、伊勢を中心に活動している若い伝統工芸の職人6人で「常若(とこわか)」と名付けたグループを結成。それぞれ数点ずつなら販売できる作品があり、「一人では無理でもグループならできる」と販売会を開いた。

すると、伝統工芸の異業種がグループを組むのは「前例がない」、「面白い」となっていろいろな企画で声をかけてもらえるようになった。特に2016年の伊勢志摩サミット開催は追い風となり、作品を紹介する機会に恵まれた。2017年にはマレーシア、香港、ベトナムでワークショップを開催。結成時に「いつか海外へ」と掲げた夢までも現実になった。

伝統工芸の女性職人で結成した「凛九」。1人ではできないこともグループならできる、と互いを支え合い、挑戦を続けている(写真:梶浦さん提供)

「一人ではできないことも、グループならできる」。そう確信した梶浦さんは、東海地方の若手女性職人9人で「凛九(りんく)」も結成。女性特有の悩みや不安を分かち合いながら結束力を高め、情報発信に力を入れた結果、2018年には日本橋三越本店(東京都)の催事に出展しないかと声がかかるまでになった。

根付は着物姿の男性が印籠や巾着袋などを帯からぶら下げるため、留め具として愛用されてきた。女性の和装でも帯飾りとして、粋なおしゃれを演出する。海外には熱心なコレクターも。写真は2018年にロンドンで開かれ、大賞を受賞したアート展で撮影(写真:梶浦さん提供)

挑戦はさらに続き、2019年には尾張徳川家の宝物を伝える徳川美術館(名古屋市)でも企画展示することがかなった。国宝や重要文化財も所蔵する由緒正しき美術館で、「凛九」のような若手グループが作品を展示することは前代未聞。

だが「博物館としても若い職人を守り、応援しなければ未来につながらない」と一人の学芸員が周囲を説得してくれた。

「ご縁に恵まれて、一つひとつ、前へ進んでいった」。仲間や応援してくれる人たちとの出会いがあって、気づけばすっかり、職人としての毎日が当たり前のものになっていた。

SNSでの情報発信で受注制作が増えるとともに、「常若」や「凛九」として百貨店などで展示販売する機会もたびたびあり、ちゃんと自分の足で生きていけるだけの稼ぎは得られている。

またロンドンのアート展で大賞を受賞するなど、海外での評価が励みになり、ますます作品づくりに没頭するようになった。

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