ただし、ジャニーズシステムの場合には、すべてのグループが原則メンバー交代なしに成長していきます。その結果、一つひとつのグループには経年変化が起きます。すでに全員がアラフィフとなった少年隊に10代のファンたちを魅了しろというのもなかなかつらい話ですよね。ですから、必然的に新しいグループが次々と誕生し、それにつれて、若い女性を魅了するという意味でジャニーズ全体を代表する「旬」なグループも、少年隊からSMAPへ、SMAPからV6、嵐へと移り変わっていっています(ここで「何が嵐だ。今、旬なのはキスマイだ(セクゾンだ)」などのツッコミは大歓迎です)。
つねに若返る不死鳥のようなグループ
これと比較すると、ハロープロジェクトの場合も、確かにスマイレージや℃-ute、Berryz工房のようにモーニング娘。以外のグループが台頭することはあります。しかし、それらに栄枯盛衰があろうと(たとえば、最近でも来年3月の公演をもってBerryz工房が活動停止するとの発表があり、またJuice=Juiceなど新グループの設立もありました)、モーニング娘。だけはメンバー交代をしながら、つねに若返る不死鳥のように、現在進行形のアイドルグループとして君臨しつづけています。
この非対称構造への評価は分かれるでしょうが、いずれにせよ、ハロープロジェクトというエコシステムの中でも、モーニング娘。は変わらぬ世界軸としての役割をはたしているわけです。
このようにさまざまな革新的要素がモーニング娘。(とハロープロジェクト)には詰め込まれたわけですが、日本のアイドルの進化の中で画期的だったのは、それが男性だけではなく、女性ファンにも強く支持されたことでした。
女性ファンと男性ファン
40代以上の1980年代アイドル現役世代にはぜひ思い返してほしいのですが、当初、男性ファンは女性アイドルを、女性ファンは男性アイドルを支持することが、かなり明確に分かれていました。これは疑似恋愛性に由来しています。
けれども、女性ファンが女性アイドルを支持する動きは1980年代に静かに起きてきていました。それは松田聖子と中森明菜の2大アイドル時代における、中森明菜への支持という形で大きく顕在化しました。興味深いことに、この女性ファンの支持は、プライベートにおいて、中森明菜がひとつの恋に固執することで女性的な弱さを見せ、逆に、恋人を乗り換えることで松田聖子がアイドルから脱皮して強い女を体現してみせると、聖子に急速に移ってしまいました。
女性ファンにとって女性アイドルは疑似恋愛の対象ではなく、つまり、自らが望む生き方のモデルであり、あこがれる対象です(いわゆる「ワナビー消費」)。だからこそ、女性ファンは強く、カッコイイあり方をアイドルにも求めるわけです。
モーニング娘。は、運営が「ホンモノ」であることを求めたとき、そのホンモノ性が持つカッコイイ姿によって、女性ファンの心をつかむことになりました。実は現代アイドルを語る際に、女性ファンの力というのは欠かせない要素なのですが、モーニング娘。はそれを最初に武器にしたアイドルグループという意味でも、現代アイドルの源流と言えると思います。
伝統の重み~道重さゆみへの応援歌~
このホンモノ性の追求と、メンバー入れ替え制度の結果、モーニング娘。は、創設以来、実に17年の歴史を重ね、まだ元気に活動しています。つんく♂をはじめとした運営の努力は報われたと言うべきでしょう。この歴史がモーニング娘。に、ほかのアイドルグループにはない、ひとつの物語性を生み出しています。それが、「リーダー」の継承です。
アイドルグループにおける「リーダー」はおニャン子クラブにもその萌芽がありましたが、はっきりと「リーダー」制を打ち出したのはモーニング娘。が最初であると思います。それは「総選挙」などで楽曲ごとに決まる「センター」とは異なり、モーニング娘。そのものを率い、まとめていく責任者のことです。AKB48でも各チームごとにリーダーがおかれていますが、モーニング娘。のリーダーはグループ全体で唯一のリーダーとして、その重さは格別だと思います(あえてAKB48と比較すれば、高橋みなみが担う「総監督」に近いでしょうか)。
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