第1回目は、まず、どうしてビジネスマンがアイドルを学ぶべきなのかを、5つの理由から説明し、第2回では、AKB48のビジネスモデルに迫った。続く第3回では、モーニング娘。から、現代のグループアイドル戦略の由来と狙いを分析する!
さて、今回は自分の体験から語らせてください。1990年代の終わりを中国赴任で過ごした筆者にとって、当時、とりわけわかりにくい存在がモーニング娘。でした。今と違ってネットの情報も断片的で日本のマスメディアの情報は、極々、わずかしか届かない環境の中で、どうも日本ではやっていることはわかる。しかし、CDを聞くかぎりSPEEDに比べて圧倒的に素人くさく、WowWowとか、YeehYeehとか言いながら、日本の未来を世界がうらやむ、だなんてアイドルらしからぬ妙な歌を唱う彼女たちは、悪い意味で既視感のある、どこか変な存在でした。
帰国して、職場でそんな話をしたところ、ある同僚が筆者に抗議してきました。「境さんは彼女たちのライブを見たことがありますか?」と。そんなこと言ったって、筆者は中国にずっといたわけで、一時帰国のときしか日本に接することなんてないのに、モー娘。ライブなんて見てるはずないじゃないっすか。
しかし、かの同僚は言い放ちました。「ライブを見なければモー娘。のことは語れないですよ」と。
その年のゴールドディスク大賞の発表式で、筆者は初めてモーニング娘。のライブを見ることができました。そのときの、彼女たちの「1曲のミニミュージカル」とでも呼びうるようなステージパフォーマンスを目にしたときの、頭を何かでぶん殴られたような衝撃は、今でも忘れることができません。CDを聞き込んだくらいでモー娘。をわかった気になってはいけない、と同僚の指摘をかみしめたのです。
おニャン子クラブはあまりにも素人だった
その衝撃のクオリティこそが、モーニング娘。の核心です。モーニング娘。は、歌を歌うアイドルグループでありながら、同時にダンスグループとしてプロデュースされています。そのダンスのクオリティは、それまでのアイドルグループでは考えられないほどきちんと作り込まれています。
モーニング娘。を語るときには、その先行者であり、プロデューサーのつんく♂自身が参考にしたおニャン子クラブと比較するとわかりやすいと思います。おニャン子クラブについてはまた別に触れることもあると思いますが、ど素人女子高生20人ほどが、まったくハモりもせずに歌う、当時としては破格の大グループで、そのインパクトは1980年代アイドルの時代に終止符を打ってしまったほどです。
今の40代以上であれば必ず記憶に残っているだろう、そんなおニャン子クラブですが、しかし、その活動期間はわずか2年半と短いものでした。
モーニング娘。の創設にあたって課題とされたのは、まさにここです。そして、おニャン子クラブは素人でありすぎたため、飽きられるのも早かったのだという仮説に立ち、モーニング娘。についてはアイドルでありながら、そこにプロフェッショナルの要素を加えることが企画されました。ここには、ホンモノ性が何より強調された1990年代に、自らが人気バンド・シャ乱Qのリーダーとして成功したアーティスト・つんく♂の思いが強く出ていたのではないでしょうか。
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