コロナ禍でも「デモ参加は自由」なドイツの発想 積極的に民主主義の議論が行われているワケ

✎ 1〜 ✎ 232 ✎ 233 ✎ 234 ✎ 最新
拡大
縮小
人数制限、充分な距離、マスク着用で行われている「ルールにそった」集会。コロナ対策そのものへの反対デモはこういったルールが破られることが多い(写真:筆者撮影)

新型コロナウイルス感染症が発生して約2年。世界中がその対策に翻弄され続けているが、決定的な対策がなく、人類にとって実験のような側面がある。それゆえに、各国の対策を見ていると、その国々の性質のようなものがよく現れ、終息後は分析・検証することが望まれる。本稿ではドイツの一昨年の春以降の対策から見いだせる2点の特徴を挙げてみたい。

「ウイルスは民主主義にとって厄介」

1つは、ドイツにおける民主主義のジレンマである。最近のヨーロッパではオミクロン株も含む、感染拡大が報じられおり、ドイツでも感染者数は減少傾向にあるものの、2月末時点で新規感染者数は13万人を超えている。さまざまな対策を講じているが、決め手には欠いている。

2020年の8月には、メルケル首相(当時)が、「ウイルスは民主主義にとって厄介だ」と発言した。意訳すれば、ウイルスは民主主義に対する「試練」「挑戦」といったような意味になるだろうか。日本から見ると、なぜ民主主義が出てくるのかピンときにくいかもしれないが、この試練はコロナがドイツで蔓延しだしたころ、2020年3月に厳格な外出制限を設けたあたりから始まる。

その前に、ドイツの民主主義について簡単に述べたい。ドイツには、当時最も進んだ民主的な憲法といわれたヴァイマル憲法(1919~1945年)がナチスによって合法的に骨抜きにされた歴史がある。言い換えれば、民主主義には完成形がなく、弱点を克服しながら、「生きた民主主義」を作らなければいけないという考えがある。

ドイツでは特に地方でこの生きた民主主義を作ろうという意識が高く、他者と意見交換をしたり、自らの意見を公に向けて表現するといったことも盛んだ。また、こうしたことを可能にする政治教育が、学校教育や文化活動などに組み込まれている。このため、小さな町でもデモや社会運動が活発に行われる。

次ページドイツ人が「自由」に敏感なワケ
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT