もう1つ、コロナ禍におけるドイツの特徴として挙げられるのは、特定の場所の「信頼性」を向上しようという取り組みだろう。
例えばワクチン接種者が携行する証明書。黄色い紙で作られた小冊子で国際的にも認められている。そこには、生まれてから受けた予防接種の記録があり、新型コロナの接種記録も記される。
飲食店など特定の場所に入るときは、名前・住所などを書いたうえで、ワクチン接種や、罹患した場合は回復した証明書を見せなければならない。現在では、スマホアプリでコロナワクチン接種の証明書を携帯している人が多いが、デジタル化が苦手な中高年が黄色い予防接種証明書を提示しているのを見ることがある。また、現在は誰がどのぐらい、その飲食店に滞在したかを記録するアプリも普及しており、感染者が発生した場合、追跡がしやすい。
コロナの感染状況に応じて要件は変化するが、いずれにせよ、特定の場所に入れるのは、ある条件をクリアした人だけというやり方だ。
個人の集まりでも「接種証明」
この方法は、個人の集まりでも見られた。筆者は2020年秋に友人の誕生日に招かれが、当時は、まだワクチン接種は始まっていなかった。招待状には「当日発行のスピードテストによる陰性証明書を持参してください」と書かれていた。
2021年8月に筆者が住む町の20代の若者たちが行った同窓会でも同様のことが行われた。会場は芝生が広がる余暇地。参加条件はワクチン接種済みか、当日発行の陰性証明書を持参とのことだった。
また、筆者はドイツで柔道を行っているが、コンタクトスポーツだけに、感染リスクが高い。一時トレーニングが中止になることもあったが、その後道場の公衆衛生コンセプトが作られた。
状況により条件は変わるが、基本的にはワクチン接種や陰性の証明書など参加条件を設け、その上で誰がいつトレーニングに参加したかを記録し、追跡できるようにしている。結果、畳の上ではマスク無着用だ。
つまり、レストランから個人の集まりまで、あらゆるところで感染リスクが少なく、万一感染した場合でも対応できる信頼性の高い空間を作る取り組みが行われている、と言えそうだ。
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