こうした取り組みは、各自治体でも見られた。例えば、ドイツにはマスクを着用する文化がなかったが、自治体の市街中心地でマスク着用義務化された時期がある。市街中心地というのはドイツにとって重要な空間で、レストランやカフェ、小売店が並ぶ「消費」空間であり、町の発祥地であるため歴史的建築物がある。広場もあり、多くの自治体が歩行者ゾーンにしている。
中心地は居心地がよく、人が長く滞在する場所であるからこそ、マスク着用を義務化することで、安心感や信頼性を高める必然性があったのではないか。
![](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/0/e/570/img_0e9d5faaefa06d1ba35234ac68c7f917261310.jpg)
また、ドイツではネットで予約して、結果は15分で出るスピードテストと陰性証明書が無料でできる仕組みも早くから作られた。スピードテストの費用は政府が負担しているのだが、言いかえれば「信頼性の高い場所」作りに力を貸しているということになる。
感染者数発表にもドイツの発想
感染者数の発表の仕方にも、場所の信頼性を示す発想を読み取れる。例えば、筆者が毎日チェックしている地域新聞で提示されるのは、地域周辺の各町の感染データ。10万人あたりの1週間合計の新規感染者数が都市ごとに示される。
近隣の町に簡単に行き来できる時代、自分が住む町と隣町の違いはあまり意味がないのかもしれない。しかし「1000人の新規感染者が発生した」という実数を出したとしても、人口5000人の町と、100万人の町ではまったく意味が異なる。その点、割合で出すことは、場所としての都市の信頼性を提示できる。個人はそのデータに基づいて自分の行動を決められるわけだ。
現時点で、どの国の、どの方法がコロナ対策として優れているのかの判断はできない。しかし、この2年余りだけを見ても、ある程度、その国の性質や発想を整理できるのではないだろうか。
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