コロナ禍でも「デモ参加は自由」なドイツの発想 積極的に民主主義の議論が行われているワケ

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ここで注目したいのは、民主主義を支えている「価値」である。ドイツは個人主義の国だが、それを支える根底には「自由」がある。自由があるからこそ、誰もが自由に自己決定をし、自分の意見を形成し、自分の意見を表明することができる。自由という価値がなければ、ナチス時代のように民主主義そのものが機能しなくなる。

そのため、ドイツは民主主義、及びそれを支えている自由という価値がきちんと守られているかについてとても敏感なお国柄になった。意見の自由は基本法(憲法に相当)でも明記されている。

外出制限下でもデモには参加できた

しかし、民主主義、あるいは、自由を尊重する価値観がコロナ禍ではジレンマとなった。

政府はパンデミック初期に外出制限を行ったが、民主主義が正常に機能しているかに対して敏感なのは政府も同じである。そこで、初期の外出制限では、小売店の営業については制限を行った一方で、新聞や雑誌を販売するキオスクなどは除外。参加人数の制限やマスク着用などの条件をつけつつも、デモや集会も許可した。

なぜ新聞や雑誌などの販売は維持したかというと、ジャーナリズムには権力の監視という側面があるからだ。さまざまなジャーナリストが活動し、複数のメディアが競い合うことで、多くの情報だけでなく、いくつもの異なる視点が提示されることになる。これによって、人々は自ら情報を仕入れ、自らの意見を形成できるができたわけだ。

一方で外出制限自体は自由を制限することになる。これは言わずもがなコロナを収束させ、「自由を取り戻す」ことが目的であるが、当然これに抵抗する人も出てくる。例えば、過激な行為を伴う、ルールを破ったデモや集会もこの一例だ。

こうした行動に対して、ドイツでは「自由について誤った理解をしている」という批判や「政府に反対意見を表明できること自体、意見の自由が担保されているという意味だ」という議論が活発に行われた。メディアでも「自由とは何か」といった話題に触れられることがしばしばあった。

それでもさまざまな制限と民主主義の整合性をとるのは難しく、冒頭のメルケル発言につながるわけだ。

ワクチン接種の義務化についても、感染の状況によって議論が揺れた。義務化の反対意見で多いのは、「自分の裁量で決定したい」というもの。ここでもテーマとなったのは自由である。

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