中国の大手医療機器メーカーの美華国際医療科技(美華医療)は2月16日、アメリカのナスダックに株式を上場した。中国企業によるアメリカ証券市場でのIPO(新規株式公開)は、ネット配車サービス最大手の滴滴出行(ディディ)が2021年6月末に実施して以来、実に7カ月ぶりだ。
美華医療の主力製品は使い捨て式の輸液ポンプ、全身麻酔キット、尿道カテーテルキットなどで、中国政府から医療用消耗品の生産ライセンスを取得している。アメリカではFDA(食品医薬品局)の認定を、欧州ではCE(基準適合)マークを取得するなど、品質が国際的に認められている。
今回のIPOの売り出し価格は1株当たり10ドル(約1156円)で、合計360万株を発行して3600万ドル(約42億円)を調達した。初日の取引では、美華国際の株価は2度にわたってストップ高となり、終値は売り出し価格より29.2%高い12.92ドル(約1493円)で引けた。
アメリカ証券市場で中国銘柄のIPOが半年以上も途絶えていた背景には、ディディの上場直後に生じた混乱の影響が大きい(訳注:詳しくは『中国でネット配車「滴滴」アプリ配信停止の衝撃』などを参照)。
外資規制の回避策として常套化
中国企業が海外の証券市場に上場する際には、VIE(変動持ち分事業体)と呼ばれる特殊なスキームを利用するのが常套策だった。中国政府は一部の業種について外国の企業や個人による投資を制限または禁止しているが、VIEはそれを回避する手段として使われてきたのだ。
(訳注:VIEスキームは、ある企業が一連の契約を通じて別の企業を実質支配する仕組みのこと。資本関係がなくても会計上の連結が認められる。中国企業が海外で上場する場合、英領ケイマン諸島などにペーパーカンパニーを設立し、VIEスキームを通じて中国の事業会社を支配下に入れ、ペーパーカンパニーを上場させる方法が多用されている)
しかしディディをめぐる混乱をきっかけに、アメリカ証券取引委員会(SEC)は中国銘柄に対する監督を大幅に厳しくし、新規上場申請の審査手続きが実質的にストップしていた経緯がある。
では、今回の美華医療の上場はSECが中国銘柄に対する監督を緩めたことを意味するのだろうか。そこで留意すべきなのが、美華医療の事業分野である医療機器業界は、中国政府の外資規制の対象外であることだ。
言い換えれば、美華医療はそもそも規制回避のためにVIEスキームを使う必要がない。ある市場関係者は、今回の上場についてこう総括した。
「美華医療の上場は(VIEスキームを利用していないため)最初から大きな問題はなかった。SECの監督強化の余波を受け、審査完了までに時間がかかっただけだ」
(財新記者:全月)
※原文の配信は2月17日
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