中国企業の米国上場「規制強化」で香港に漁夫の利 当局のサイバーセキュリティー審査を免除か

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香港の市場関係者の間で、アメリカで上場を計画していた中国企業が上場先を香港に切り替えるとの期待感が広がっている(写真はイメージ)

香港証券取引所の株価が、7月に入ってから連日上昇を続けている(訳注:香港市場には、法人としての香港証券取引所の株式が上場されている)。背景にあるのは、中国当局による自国企業の海外上場に対する引き締め強化だ。市場関係者の間では、アメリカで上場を計画していた中国企業が、上場先を香港に切り替えるとの期待感が広がっている。

7月16日、ブルームバーグは情報筋の話として、香港に新規上場する中国企業のサイバーセキュリティー審査を中国当局が免除する計画があると報じた。このニュースが伝わると、同日の香港証券取引所の株価は急騰。一時、前日の終値より5.1%高い1株当たり531香港ドル(約7514円)をつけ、過去4カ月間の最高値を記録した。

その前週の7月10日、中国のインターネット規制を所管する中国国家インターネット情報弁公室は「サイバーセキュリティー審査弁法」の改定案を発表し、国境をまたいだデータのやりとりの潜在的リスクを回避するための多数の新規制を追加。そのなかで、ユーザーの個人情報を100万件以上保有するネット企業が「海外で上場」する場合に、事前のサイバーセキュリティー審査を義務づけるとしていた。

香港にとって市場活性化のチャンス

注目すべきなのは、ここでいう「海外で上場」に香港は含まれず、事前申請が免除されるとの解釈ができることだ。その結果、上場先をアメリカから香港に切り替える中国企業が増えれば、香港証券取引所にとっては市場活性化のチャンスになる。

本記事は「財新」の提供記事です

実際、すでにアメリカ証券取引委員会(SEC)にIPO(新規株式公開)の目論見書を提出済みだったオンライン音声コンテンツプラットフォームの喜馬拉雅科技(シマラヤ)、シェア自転車のプラットフォームの哈囉出行(ハローバイク)、フィットネスアプリの「Keep」などの中国企業が、上場計画の見直しに入っている。

「アメリカと中国の政治的対立が続き、中国当局が自国企業に対する引き締めを強化するなか、中国関連銘柄が上場先を香港に移す流れは続きそうだ」。香港の金融サービス大手、光大新鴻基(エバーブライトサンフンカイ)のストラテジストを務める温傑氏はそう見る。さらに、こうした潮流が中国本土の投資家を(香港市場に)呼び込むことにつながると、温氏は予想する。

(財新記者:周文敏)
※原文の配信は7月16日

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