7月16日、中国人民銀行(中央銀行)のワーキンググループが「デジタル人民元」の研究開発の進捗状況をまとめた白書を発表した。そのなかで、デジタル人民元の研究開発における中国人民銀行の基本的な立場や、設計の大枠、関連政策上の考え方などの詳しい解説が初めて披露された。
中国人民銀行は2019年末以降、深圳、蘇州、雄安、成都、および2022年北京冬季オリンピック予定会場でデジタル人民元のテスト導入を実施してきた。2020年11月からは、上海、海南、長沙、西安、青島、大連の6都市が新たに加わった。
これらの都市でデジタル人民元を支払いに使える場所は、2021年6月30日時点で132万カ所に及んだ。具体的な用途は、公共料金、飲食サービス、公共交通運賃、ショッピング、行政サービス手数料などだ。(デジタル人民元を利用するために、専用アプリを通して開設された)個人向けウォレットは2087万口座を超え、累計取引件数は7075万件超、決済総額は約345億元(約5865億円)に上った。
冒頭の白書では、デジタル人民元と(現金や、中国で広く普及するネット決済システムなど)既存の決済システムとの関係の説明に多くのページを割いている。デジタル人民元の位置づけについては、既存の紙幣や硬貨と同様の現金通貨(M0)であるとした。(紙幣などリアルの)人民元も、需要がある限り発行を続けるとしている。
国境を越えた利用にも注目が集まる
では、デジタル人民元の利点はどこにあるのか。白書によれば、デジタル人民元の導入により、国民の多くが金融サービスを利用するためのハードルが下がるという。例えば、人々は銀行口座を持たなくても、(アプリ上の)デジタル人民元ウォレットを通じて基本的な金融サービスを享受できる。またデジタル人民元は即時決済が可能なため、企業にとっては支払いの利便性が向上するとともに、資金の回転効率が高まるとした。
海外からは、デジタル人民元の国境を越えた利用にも注目が集まっている。 白書では、G20(主要20カ国地域財務相・中央銀行総裁会議)などの国際組織によるクロスボーダー決済の改善提案に中国人民銀行が呼応し、国内でのテスト導入の知見や国際社会のニーズを考慮したうえで、将来的な可能性を検討するとした。
(財新記者:胡越、彭駸駸)
※原文の配信は7月16日
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