中国の新興電池メーカーの蜂巣能源科技(SVOLT)は7月16日、希少金属のコバルトを使わない「コバルトフリー電池」の量産を世界で初めて開始したと発表した。同社が独自開発したもので、正極材にニッケル、コバルト、マンガンを使う「三元系」のリチウムイオン電池からコバルトを取り除いた「二元系」であるのが特徴だ。
SVOLTのコバルトフリー電池のエネルギー密度は、1キログラム当たり240Wh(ワット時)。世界の大手電池メーカーが製造している三元系の電池は同250~280Whであり、それに比べてエネルギー密度が低い。
電池業界では長年、EV(電気自動車)などに搭載されるリチウムイオン電池のコバルトフリー化が待望されてきた。コバルトは年間産出量が全世界で約15万トンしかなく、電池メーカーは原材料を安定的に確保するためコバルトへの依存度を極力小さくしたいと望んでいるからだ。
コバルトの国際価格の上昇続く
正極材の原材料費は電池の製造コストの3~4割を占めており、コバルトの国際価格の上昇は電池メーカーのコストアップに直結する。金属市場情報を専門に扱うイギリスのメタル・ブレティンのデータによれば、7月14日時点のコバルト価格は1ポンド当たり24.4ドル(約2685円)と、年初に比べて4割以上も値上がりしている。
コバルトフリー電池の実用化を目指してきたのは、SVOLTだけではない。車載電池で世界最大手の中国の寧德時代新能源科技(CATL)は、2020年の時点で「コバルトフリー電池の技術的蓄積がある」と対外的にコメントしていた。
電池材料メーカーの格林美(GEM)は2020年5月、三元系の正極材のコバルト含有量を100分の1以下にできる前駆体(訳注:正極材を合成する基になる金属水酸化物)を開発したと発表した。だが、CATLも格林美も製品の商用化には至っていない。
複数の業界関係者は、財新記者の取材に対して「コバルトフリー電池の本格量産への道のりはまだ長い」との見方を示した。また、業界のある専門家はSVOLTのコバルトフリー電池について、「市場に投入された後の実際のパフォーマンスを見てから評価したい」とコメントした。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は7月18日
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