アメリカの電気自動車(EV)大手のテスラは10月19日、中国・上海の工場で生産した主力EVの「モデル3」を欧州に輸出すると発表した。ドイツ、フランス、イタリア、スイスなど10カ国以上に向けて月内に出荷を開始する。
テスラが上海に建設した「ギガファクトリー」は、2020年1月から中国市場向けのデリバリーを開始。現時点ではモデル3だけを生産しており、生産能力は年産15万台だ。同社のイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は9月22日、アメリカ・カリフォルニア州で開催した株主総会で上海工場の生産能力を年産100万台に引き上げると宣言した。
自動車販売の業界団体のデータによれば、テスラは2020年1~9月に中国市場で累計8万500台を販売しており、上海工場の生産能力にはまだ余裕がある。また、同社はドイツのベルリンに2021年7月の完成を目指して新工場を建設中だが、そこではSUVの「モデルY」を生産する計画だ。したがって欧州市場向けのモデル3は当分の間、上海工場から輸出されることになるだろう。
CO2排出規制強化でEVの販売急増
欧州の自動車市場ではいま、EVの販売が急速に伸びている。EU(欧州連合)のCO2(二酸化炭素)排出規制強化を背景に、各国がEV向けの補助金を増やしているためだ。例えばドイツでは、消費者がEVを購入すると1台当たり最大6000ユーロ(約74万円)の補助金が支給される。フランスは今年、EV向け補助金の予算を総額2.6億ユーロ(約322億円)から4億ユーロ(約495億円)に引き上げた。
そんななか、中国製のモデル3はテスラが欧州で販売を拡大する切り札になるかもしれない。と言うのも、モデル3の廉価グレードである「スタンダードレンジプラス」の中国仕様は、動力源に低コストの「リン酸鉄系」リチウムイオン電池を採用。中国政府の補助金を利用した後の実質価格を10月1日から24万9900元(約393万円)に値下げしたばかりだからだ。
テスラによれば、欧州市場に輸出するモデル3の仕様は中国向けと同じだという。これまで欧州で販売していたモデル3はアメリカのフリーモント工場製であり、上海工場製への切り替えとともに値下げに踏み切る可能性が高そうだ。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は10月20日
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