それに対して本書は、「従来の生産性問題に関する研究は、問題の根本原因がマクロ経済政策にある可能性が高いという立場に立ってきたが、生産性低下の原因と思われる要因はもっと多い」とし、「これらの要因の多くは、企業が事業を行う環境に関わるものである。事業環境以外の要因として指摘されるのは、企業内組織と企業経営の問題である」とした。
製造業に限って言えば、アメリカ企業が問題を抱えていたという本書の指摘は正しい。本書の誤りは、製造業の復活という視点から逃れられず、製造業以外の分野で新しい経済発展が起こることを予見できなかったことだ。だから、「経済政策だけでなく企業に問題がある」という本書の視点は重要である。
そして、これと同じ問題が、今の日本に存在する。つまり、マクロ経済政策の問題以外に、企業内組織と企業経営の問題、そして教育の問題がある。われわれは、それらに目を向けなければならない。本書の最大の教訓は、この点にある。
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・U.S. Bureau of Labor Statistics
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2010年10月30日号)
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