アメリカがデフレに落ち込まなかったのは、付加価値の高いサービス産業が成長したからであると、前回述べた。
アメリカにおけるサービスと財の相対関係を、GDP統計の生産物別データ(Gross Domestic Product by Major Type of Product)で見よう。まず名目値で2009年と1995年を比べると、GDPの総額は1・90倍になったが、財(Goods)は1・55倍に増加するにとどまった。それに対して、サービスは2・12倍に増加した。この結果、名目GDPに占める財の比重は低下し、サービスの比重が上昇した。なお、建築物は1・74倍になった。
このような結果となったのは、財とサービスの相対価格が大きく変わったからである。実際、実質値で見ると、この期間にGDP全体は1・42倍になり、財は1・61倍になった。つまり、財の価格はこの間に低下したのである。そして、実質値で見れば、アメリカにおいても、財のウエイトは上昇したわけだ。
財の中でも、耐久財の価格低下が著しく、実質値での増加率も大きい(この期間に、名目値では1・43倍だが、実質値では1・80倍)。財価格の低下は、新興国の工業化によって工業製品の価格が全世界的に低下したことによるから、アメリカも(日本と同じく)新興国工業化の影響を受けたことになる。
耐久財の中でも、コンピュータの価格低下は著しい。名目値でのコンピュータ購入費はこの間に1・08倍になったにすぎないが、実質値では実に21・3倍に増加したのである。IT革命によってコンピュータの性能が向上し、それを韓国、台湾などのアジア新興国が製造できるようになったことの影響が、ここに印象的な形で表れている。購入者の側から言えば、支出額をほとんど増やさずに、20倍を超える計算能力を手に入れたことになる。
実質値で見ると、サービスはこの間に1・40倍になった。つまり、サービスはGDP全体と同じ率で増加したわけだ。サービスは新興国工業化の影響を受けないので、財に対する相対価格が上昇し、このような結果となった。