(第35回)なぜ日本だけがデフレになるのか

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(第35回)なぜ日本だけがデフレになるのか

これまで述べてきたように、日本が1990年代の半ば以降長期にわたる停滞に陥った基本的な原因は、新興国の工業化である。韓国、台湾、そして中国が工業化し、安い労働力を使って安い工業製品を生産できるようになったことが日本の製造業の成長を抑え、経済停滞とデフレをもたらしたのだ。

この考えに対する反論として、「仮にそうなら、なぜ日本だけが影響を受けるのか? アメリカも他の国も、日本と同様の影響を受けるはずだから、日本だけが停滞したのはおかしい」と言われることがある。そして、「日本の停滞の原因は日本に固有のもの。特に金融政策だ。したがって、一層の金融緩和が必要」と主張される。これが、いわゆる「リフレ論者」の意見である。しかし、この考えは短絡的で皮相的なものだ。これについて以下に述べよう。

まず、95年から2009年までの消費者物価の推移について、日米両国を比較してみよう(下表を参照)。

アメリカでは、この間に平均年率2・5%の上昇が続き、09年の消費者物価の水準は95年の1・41倍になった。これに対して日本は、同期間中、年平均0・03%の下落となり、09年の水準は95年より0・4%低くなった。

このように、日本とアメリカの物価動向は、大きく違う。日本はデフレになったが、アメリカはならなかったのである。

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