高付加価値サービスの成長が好循環もたらす
では、日米両国のこのような違いをもたらした原因は何だったのか?
それは、供給面に大きな違いがあったことである。具体的には、アメリカで高付加価値サービス業が発展し、日本でしなかったことだ。それを確かめるために、次のような仮想実験をしてみよう。
仮に新興国工業化という事態がなかったとしよう。その場合は、製造業が80年代の延長線上で成長していただろう。特に日本では、80年代までのような成長が続き、アメリカ経済を圧倒しただろう。
しかし、実際には、新興国が工業化した。このため、製造業が伸びなくなった。この点では日米で基本的に差がない(詳しく言えば、アメリカでは70年代から日本の輸出の影響で脱工業化が進んだという違いがある。ただし、90年代以降の製造業の停滞は、日米両国で起きており、あまり大きな差がない)。
ところで、製造業の賃金を新興国並みに引き下げることはできないので、雇用を減らした。問題は、その受け皿だ。アメリカでは製造業より生産性が高いサービス業が引き受けたのに対して、日本では製造業より生産性が低いサービス業が引き受けたのだ。ここに大きな違いがある。
つまり、新興国工業化の影響は同様に受けたが、それに対する対応が両国で違ったのだ。その違いが、両国の経済パフォーマンスの違いをもたらした。仮にアメリカで高付加価値サービス業が成長しなければ、日本と同じ結果になっただろう。