日本企業が生産拠点を海外に移転する動きが急速に進展している。
電機大手のシャープは、これまで技術流出を防ぐために国内に限定してきたテレビ用液晶パネルの生産の海外移転に踏み切った。具体的には、看板工場である亀山工場の生産設備を中国に移す。同社の片山幹雄社長は、「技術的に最先端のものでも、日本で生産し輸出することは困難な状況で、これまでのビジネスのあり方を抜本的に変える必要がある」と述べた。
1980年頃からアジアを中心として軽自動車の海外生産を行なってきたスズキは、インドに年間生産能力25万台の四輪車の新工場を建設する。これによりインドでの年間生産能力は150万台となり、日本の110万台強を大きく上回る。日産自動車は、中国での自動車の年産能力を2012年に現在の8割増の120万台に増強する。
経済産業省が9月22日に発表した「海外現地法人の動向」によれば、10年4~6月期の日本企業の対外設備投資は、前年同期比8・2%増と6期ぶりのプラスになった。電機では53・2%の伸びだ。対北米、欧州はマイナスだったが、アジアは29・9%の増になった。この期における国内の名目民間企業設備投資が対前年同期比で1・6%しか伸びなかったのと比べると、大きな違いだ。
従業者数の増加は、すべての地域でプラスで、アジアは10・1%増となっている。この数字は、日本の製造業が国内生産に見切りをつけ、雪崩を打ってアジアでの現地生産に向かいつつあることを示している。
日本の製造業の海外生産比率(現地法人売上高÷〔現地法人売上高+本社企業または国内法人売上高〕)は、80年代には極めて低い値であったが、その後上昇を続け、01年度には14・3%となった。海外進出企業ベースに限ると、29・0%にまで上昇した。しかし、この動きはその後も続いたわけではなく、01年以降は、ほぼ横ばい状態になっている。06、07年を除けば、海外進出企業ベースで、29~30%台であり(下図)、あまり大きな変化がない。「空洞化」という言葉も忘れ去られてしまった感がある。