(第33回)国際競争力がない日本のサービス産業

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(第33回)国際競争力がない日本のサービス産業

日本のサービス貿易収支は、恒常的に赤字である。この状況は戦後一貫して継続しており、いまに至るまでまったく変わっていない。アメリカのサービス貿易収支が黒字で、財貿易の赤字を補っているのとは対照的だ。

「輸送」は、受け取り、支払いともサービス貿易全体の3分の1程度を占めており、日本のサービス貿易で最大の項目だが、海上、航空ともに赤字だ。航空旅客輸送について見ると、受け取り3600億円に対して支払いは1兆2590億円であり、圧倒的に支払い超過である(2007年、以下同様)。日本人が外国旅行でエアラインを選択する場合、機内サービスを日本語だけで受けられることからドメスティックバイアスが強いのではないかと考えられるのだが、実際の数字がこのようになっているのは、誠に意外である。

「旅行」は、支払いが3兆1190億円であり、受け取り1兆0990億円の3倍程度になっている。日本人が海外旅行をして海外に支払いをする半面で、外国から観光客を日本に呼び寄せることはできないのである。日本を観光立国化しようという声があり、観光庁という役所まで設置されたのだが、現実は観光立国にはほど遠い。

08年の外国人旅行者数は、日本は835万人だが、フランスは7930万人、アメリカは5300万人だ(日本人の海外渡航者数は約1600万人)。外国人旅行者数を1000万人にすることが計画されているが、仮にそれが実現したとしても、南アフリカを抜いて世界ランキングが二十数位になるだけのことである。

輸送、旅行以外のサービスでも、黒字は、建設、金融、特許等使用料のみ。しかも、額はそれほど多くない。金融の黒字は、保険の赤字で打ち消されている。希望が持てるのは特許等使用料だが、これは製造業が強いことの反射的なものであり、サービス産業のアウトプットとは言い難い。「その他業務サービス」は、額で見て輸送に次ぐ大項目だが、恒常的に赤字である。

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