このような結果になってしまうのは、日本のサービス産業が、小売り、飲食など国内対人サービスを中心としており、国際競争力を持つサービスを提供できないことの表れだ。日本のサービス産業は、国際的に見て弱い産業なのである。製造業の比重が低下していく中で、生産性の低いサービス産業しか存在しないことが、日本の所得が低下していく基本的原因になっている。
サービスの貿易立国へ転換する必要性
サービス貿易が経済成長や国際収支に与える影響も、重要である。下図に示すように、アメリカの07年のサービス輸出のGDP比は3・6%で、輸入が2・7%、黒字が0・9%である。これに対して、日本のサービス輸出は2・9%で、輸入が3・4%、赤字が0・5%だ。
日本は貿易で国の経済を支えていると言われるが、それは財の輸出入に関してのことである。しかもそれが経済的妥当性を持ったのは、1980年代頃までの世界経済の構造を前提にした場合のことである。
新興国が工業化したため、先進国における製造業の優位性は低下した。所得水準が高い先進国は、製品価格の点では、賃金の低い新興国に太刀打ちできない。新興国では供給できない専門的で先端的なサービス産業を成長させない限り、新しい世界経済の環境の中では先進国としては生き延びられないのだ。
日本における製造業生産拠点の新興国への移転は、今後加速する。したがって、日本が財貿易でこれまでのような黒字を維持するのは困難だ。だが、仮に日本がアメリカ並みの生産性の高いサービス産業を持つことができ、サービス貿易の現在の赤字をアメリカ並みの黒字に転換できれば、経常収支にGDPの1・4%分の寄与をする。したがって、財貿易収支の黒字が縮小しても、国際収支をかなりの程度支えることができるだろう。産業構造をその方向に改革することが焦眉の急だ。