米国の消費者物価はサービス価格大幅上昇
次に両国の消費者物価の内訳を見よう。日米間で大きく違うのは、サービス価格の動向だ。アメリカでは年率3・2%で上昇し、09年の水準は、95年の1・56倍になった。しかも、60%と大きなウエイトを占めている。それに対して日本では、サービス価格は上昇はしたものの、年率0・3%でしかなかった。09年の水準は、95年の1・04倍になったに過ぎない。ウエイトもほぼ50%であり、アメリカほど大きくない。
このように、日米の物価動向の違いをもたらした主要な要因は、アメリカでサービス価格が突出して上昇したのに対して、日本では上昇率が低かったことだ。しかも、サービスのウエイトが、アメリカでは高いが日本では低い。日本がデフレになりアメリカがならなかったのは、このためだ。
以上で述べた事実は、次のような含意を持つ。第一に、「日本でもアメリカでも、財とサービスの価格動向に大きな違いがある」という点では同じだ。これは、物価動向を左右した要因が貨幣要因または所得要因でないことを示している。仮にそれらが要因なら、財とサービスの価格上昇率は、ほぼ同じ値になるはずだ。少なくとも、現実に見られるような大きな違いが生じるはずはない。
第二に、財価格は、日本でもアメリカでも、95年から09年の間でほぼ不変だ。この点でも両国はほとんど変わりない。アメリカの場合、所得が上昇したのだから財価格が上昇しても不思議でないが、そうならなかった。これは、アメリカでも供給面の要因によって低価格化が進んだからだ。これは、新興国工業化の影響だ。新興国工業化は、両国にほぼ同じ影響を与えたのである。
もう少し詳しく見ると、アメリカでも下落が顕著な品目がある。95~09年の間に、耐久消費財は年平均1%で下落し、86%の水準になった。衣料は年平均0・7%で下落し、90%の水準になった。玩具価格は約半分になった。テレビの価格は、96~10年で7分の1になった(なお、新車価格はほぼ不変)。これらの点で、日本とあまり変わらない。しかし、全消費に占めるウエイトが低い。だから、アメリカは全体として新興国の影響をあまり受けなかったのである。