1980年代末に刊行された『Made in America』を前回紹介した。この報告書(以下「報告」)は、アメリカ製造業の生産性低下に警鐘を鳴らし、その復活を望んだ。
結論の中に、「まだ成功していないうちに祝杯をあげる理由がないのと同様、結果が出ないうちから絶望に陥る理由もない」という文章がある。これは経済競争で、アメリカが敗北しつつあることを、事実上認めた発言だ。いま読むとさまざまな意味で興味深いので、その前にある文章を引用しよう。
「現在、アメリカは、他国との比較、あるいは、過去のアメリカとの比較において、間違いなく深刻な生産性の問題を抱えている。(中略)停滞した生産性の伸び、品質と新しさに欠ける米国製品を見れば、この点は明瞭である。この問題への取り組みがおろそかにされるならば、技術とマーケットの本質的な変化に対して、素早く、かつ効果的に適応した他国に比べ、アメリカの事態はさらに悪化するであろう」(邦訳『Made in America アメリカ再生のための米日欧産業比較』236ページ)
しかし、現実には、そうはならなかった。アメリカは、この報告が望んだ「製造業の復活」という方向とは、まったく逆の方向に進んだ。そして、図に示した1人当たりGDP推移からもわかるように、史上空前の大繁栄を実現したのだ。
報告は、(提言が実行に移されるならば)「アメリカは、かつて20世紀の大部分を通じてこの国が示したインダストリアル・パフォーマンスを特徴づけるダイナミズムとリーダーシップを発揮しながら21世紀を迎えることが十分可能であると確信している」とした。
アメリカが21世紀において「ダイナミズムとリーダーシップを発揮した」のは事実だ。しかし、それは20世紀型の「インダストリアル・パフォーマンス」を通じてではなかった。アメリカは、20世紀型とは異なる21世紀型の経済を作り上げることによって成功したのだ。