(第38回)反面教師として読む Made in America

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大規模製造業を重視しすぎるバイアス

したがって、本書はアメリカの未来を予見できなかったことになる。とりわけ、IT革命の意義をまったく評価しなかった。90年代初めにはすでにITが登場しつつあったにもかかわらず、それが産業構造を大きく変えることを予測できなかったのだ。ソローがIT革命を認めなかったと前回述べたが、こうした見方は正統派経済学者の間では一般的だった。クルーグマンもそうである。

グリーンスパンは回想録で、クリントン大統領がITを積極評価したのに、サマーズが否定的だったことを述べている。IT革命は、カリフォルニアを中心に生じた。だから、東部エスタブリッシュメントの目には、「コンピュータマニアのばか騒ぎ」と映ったのかもしれない。

報告は、先端金融技術も評価しなかった。新しいファイナンス理論は、すでに新産業を形成しつつあったのだが、それを無視している。MIT(マサチューセッツ工科大学)は、この分野で主導的な役割を果たした大学だから、奇妙と言えば奇妙なことだ。

サービス産業の成長を予測できなかっただけではなく、製造業における生産方式の変化も予測できなかった。報告は、次のように日本の垂直統合的大規模生産を称賛し、アメリカのベンチャー的生産を過小評価している。

まず、技術革新はベンチャーキャピタルの援助を受けたアメリカの中小企業から生み出されたにもかかわらず、技術が成熟するにつれて、大規模で多様化した日本のコングロマリット的企業との競合が生じ、アメリカが敗れたとする。

日本では、巨大で垂直統合した企業による生産がなされる。企業は銀行と株式の相互保有も含めた密接な提携関係にある。また、終身雇用的雇用慣行が転職率を低くしている。このため長期的なマーケットシェアの極大化をめざした長期戦略をとり、生産性が高くなる。

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