黒田総裁は天才かつ秀才だが、間違っている なぜ無意味な金融緩和をするのか?

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しかし、記者の側は、いつもと違った。知的レベルで圧倒されている記者たちは、おそるおそる質問し、黒田氏が高笑いするたびにびくつき、自信満々に全くそんなことはない、と答えられると、それで萎縮してしまい、質問が途絶えてしまうような場面も散見されていた。これまでは。

昨日は違った。記者たちも馬鹿ではない。経済学がわかっていなくとも、黒田氏に議論で論破されようとも、何かがおかしい、と質問を浴びせ続けた。一昨日まで、日本経済は順風満帆と言っていたのに、この豹変ぶりは何事か。何が変わったのか。こういう認識に変わったのはいつだったのか。

市場を見てもサプライズだったことは明らかだが、市場との対話に失敗したと言えるのではないか。次々浴びせられる質問は、黒田氏よりも非常にまっとうで、素直で素朴な疑問で、それゆえに力があった。

デフレマインドとは何か

黒田総裁は、記者たちの質問にどう答えたか。本質的には、デフレマインドの脱却。これが最優先であり、これの確実な達成にやや懸念が出てきたので、なんとしてもそれは押し戻す。そのためには、先手必勝。やるときは一気にやり、逐次投入しない。昨年4月の緩和は成功だし、そこで流れは完全に変わったが、ここで戻されてはいけないので、とどめを刺すために、デフレ脱却を確実にする。こういうことだった。

「ところで、デフレマインドってなんですか?」

私が記者会見で質問ができたならば、こう聞きたかった。デフレマインドとは何だろう。日本経済悲観論からの脱却。悲観論に基づく、縮小均衡に陥った株価と日本経済を、この落とし穴から引きずり出す。悲観マインド、縮小均衡、悲観均衡からの脱却。それならわかる。そして、100%賛成だ。

昨年4月の異次元緩和はこれに成功した。私は手段には反対だったが、結果的な悲観論からの脱却の成功は素晴らしかったと思う。そして、アベノミクスも、異次元緩和も、そこで役割を終えたのだ。

もはや脱却するものはなにもない。

悲観論から脱却した現在、必要なことは、日本の構造問題の解決だ。経済成長が必要ならば、それは短期的な景気対策ではなく、長期持続的な成長を供給サイドから作り出す政策だ。もはやマインドの問題ではない。そして、インフレ率が1%か2%かは関係ない。

これは黒田氏自身も言っていたことだ。異次元緩和により、日本経済の問題が需要サイドの問題から供給サイドの問題にあることが明らかになった。つまり、短期の需要不足の問題に覆い隠されていたが、量的質的緩和により、それが払拭されたために、日本経済の真の問題は潜在成長力の低下であり、構造改革などによりこれを高めなければならないと言っていた。財政政策ももちろん、構造改革が必要で、消費税引き上げは必要だと言っていた。

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