「過労死は日本社会の根深い問題です。いまも毎年多くの犠牲者が出ています。社会の木鐸とも言えるNHKは局内で事実を調査し、検証番組のような形で社会に伝えて、過労死の撲滅に向けて警鐘を鳴らしてゆく。そういう役割と責任があるはずです」
佐戸記者の2歳年下の妹めぐみさんは、一昨年の映画『未和』の試写会、昨年のNHK労組「日放労」の勉強会に続いて職員の前で話した。この日は時に涙声になりながら、こう語りかけた。
「私にとって姉は本当に尊敬できて、心から愛していた存在でした。亡くなったと聞いたときに頭の中が真っ白になる瞬間だとか、警察で対面した時の状況は昨日のことのように思い出します」
「同じチームのメンバーが連絡が取れないという状況になったときに、誰かが家に見に行ったりとか、親に連絡を取ったり、そういったことが当時なぜされなかったのか、という疑問は消えません。どういう組織だったらそんなことが起こってしまうのか、きちんと検証していただくべきと、最近ますます考えるようになりました」
「NHKという組織はどこかおかしい」と語る職員
1時間にわたる遺族の話の後、5人の職員が発言した。同じ組織に所属する職員としての率直な訴えがそこにはあった。
・佐戸記者と一緒に都庁クラブで働いた同僚記者
「2013年、西新宿の都庁に私もいました。当時、極めてしんどい取材環境のなかで突っ走っていたと思っています。佐戸さんを、仲間を亡くしたことを今も心に留めていますし、なぜ佐戸さんが亡くなったのか、ずっと考えながら仕事をしています」
・佐戸記者と面識があった先輩記者
「佐戸さんは社会の底辺で生きる人に寄り添う取材をする記者だったと思います。彼女と一緒に写っている写真を、今も7月の命日のときに見返しています。
きょう話を聞いてですね、確かに働き方改革は実現しているんですけれども、魂は入ってなかったんじゃないかというふうに思います。ご遺族の苦しみを分かちあう作業を、遅きに失しているのかもしれませんが今からでも、私はぜひさせていただきたい」
・首都圏局の職員
「きょうお話を聞いて、私が思っていることとはずいぶん違う思いをされてきたんだな、その違いはどこから発生するのかということを考えておりました。とにかく話を聞いて思ったのは、NHKという組織はやっぱり、どこかおかしいんだろうな、と」
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