その後、遺族との質疑応答や職員同士のディスカッションなどはなかった。司会役の放送部長と局長がまとめの話をして、開始から1時間40分ほどで閉会した。
東京五輪問題とのあまりに違う対応
最近、NHKのある対応が広く報じられた。『BS1スペシャル 河瀬直美が見つめた東京五輪』の中で、五輪反対デモに関して不正確なテロップがあった問題だ。NHKは問題発覚から1月ほどで14ページにわたる調査報告書を作成した。職員6名の懲戒処分とあわせてホームページで即日公開した。
政府が推進した国家的行事にまつわる問題への対応の早さとは裏腹に、佐戸記者の過労死問題については、いまだに調査報告書が作られる気配はない。
佐戸記者の父・守さんは、娘についての調査報告書がなかったという事実を受け止めきれずにいる。尊い人命が失われたことを、軽く扱っているように感じたからだ。
当時の上司らが責任を問われず誰一人処分を受けていないこと、電通の過労死事件については今でも特集を組んでいるのに局内の過労死については検証番組を作らないこと。これらについても納得がいかないままだ。
そして、NHKでの講演を終えてこう話す。
「今回の勉強会を、遺族の憤りをガス抜きするためのものとして扱ってほしくはありません。自分の職場で起きた問題についてきちんと検証しようと、職員の中からさらに声が上がってくることを期待しています」
2月7日、筆者は調査報告書を作る予定の有無やNHK前田会長の認識について、NHKに質問を送った。勉強会の翌日、NHK広報局から以下のような回答があった。
「公共放送を支える大切な仲間を失うようなことは二度と繰り返してはならないことだと考えています。関係者への聞き取りなどを踏まえ、組織として記者の労務管理に不十分なところがあったと認識し、働く人の健康を最優先にして、長時間労働に頼らない組織風土づくりや業務改革に取り組んできました。
佐戸未和さんの過労死を決して忘れず、職員が健やかにいきいきと活躍できる職場づくりを進めていきます」
「未和 NHK記者の死が問いかけるもの」
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