実は「高速道200円で普通車乗り放題」が可能な訳 NEXCOの計画「2066年に無償化」は絵に描いた餅

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利用車両が増えることで、道路の管理費用がかさむといった心配もあるかもしれない。

しかしそれも、まさに杞憂だ。NEXCOの3社において、道路補修費のほか社員給与費も含めた管理費用の合計額は、2018年度で6517億円。定額制にして仮に利用車両が10%増えたとすると、その通行料収入は当然に現在の料金収入の10%である2350億円増加する。それに対して、道路維持管理費を含めた管理費用が仮に「通行量の増え方の2倍増加する」と最悪の想定をしたとしても、1303億円増加するだけである。

NEXCOの3社のうち、利用車両の内訳を発表しているのは、実はNEXCO東日本だけであり、3社全体の正確な内訳はわからない。本来は国民の共有財産であるはずの高速道路の利用内訳が発表されていないのは大問題だが、ここでは深入りしないでおこう。

仮に軽自動車が5%、普通自動車が60%、2軸トラック・路線バスなど大型車が30%、4軸トラック・観光バスなど特大車が5%の車両割合とした場合、「軽自動車300円、普通車400円、大型車1500円、特大車2500円」の定額制で十分に今以上の料金収入が得られる。

普通車400円であれば、車を通勤だけに使っている人も、多くの場合は今より確実に安くなる。値上げにつながる人はほとんどいないと考えられる。

定額制料金のポイントは「リスクの少なさ」

そして筆者らが提言する定額制料金の一番肝心なところは、「リスクの少なさ」だ。

必要経費で比較的大きいものといえば、料金表の改定費用とETCのためのコンピューターソフトの更新くらいだろう。それとてシンプル極まりない料金体系になるわけだから、ちょっとした料金割引キャンペーンを行うよりはるかに安く済む。考えられる反論については以前の記事(観光に高速道「走り放題」が必要なこれだけの理由)でも少し論じたが、定額制によって何かが悪くなるという人がいたら、それは何か教えてほしい。

NEXCOの3社の2018年度の決算の概要は、図表2の通りである。高速道路を使う車から徴収する「料金収入」とほとんど同じ規模で「道路資産完成高等」という、一般的な財務諸表では見慣れない項目が挙がっている。

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