実は「高速道200円で普通車乗り放題」が可能な訳 NEXCOの計画「2066年に無償化」は絵に描いた餅

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高速道路は、建設して完成した部分を独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に引き渡す。完成までにかかった経費(借入を含む)と同額が「道路資産完成原価」として支出欄に記載される。

言ってみれば、NEXCOが同機構の代わりに工事を行い、工事にかかった経費を支出に計上し、同額で引き渡したので収入にも計上するという、普通の企業では許されない「行って来い」の水増し経理なのである。

NEXCO3社の経常利益は1兆7194億円?

また、支出において、維持管理費よりもはるかに大きな金額を占めているのが、これまた通常の企業会計ではお目にかからない「道路資産賃貸料」という項目だ。

高速道路民営化の際、NEXCOの3社は同機構から高速道路を借り受けて、管理・運営のみを行うという体制が取られた。このため、同機構が銀行に対して返済する元金と利息の合計額を、NEXCOの3社が毎年その利益から拠出することになっている。

その拠出金が「道路資産賃貸料」である。この返済の肩代わりをしなければ、NEXCOの3社の経常利益は1兆7194億円にもなる。

そして、日本高速道路保有・債務返済機構の発足時の借入総額は37兆3976億円だったが、約20年で10兆円弱を返済している。残り約30兆円の債務にかかる平均利率は1.02%(同機構の公表値)であるから、利息の返済だけなら約3000億円で済む。

現状の計画では、令和48年(2066年)という、現在の高速道路利用者のほとんどの人が利用できない遠い未来に借金の返済が完了し、高速道路は無料になる予定だ。しかし無料化しても前述のように維持管理費用約6500億円は必要である。その点で、よく言われる「高速道路無料化」は現実的ではないのだ。

道路の維持管理などに直接使われる金額が約6500億円で、これに累積債務の利息約3000億円を足しても、1兆円足らずという金額に過ぎない。遠い未来の完済=無料化を諦めれば、毎年1兆円を料金収入でまかなえばよいということになる。

料金収入1兆円を達成するには、2019年度と同じだけの利用車両数であれば、1台当たり347円の通行料を得られればいいことになる。そこから計算すると、先ほどの「普通車400円」よりさらに安く、普通車で200円、大型観光バスなど特大車でも800円の定額制にできる。

今、トラック輸送は日本の物流の96%を担っているが、実はそのほとんどは、県境をまたいでいないことをご存じだろうか?

2018年に国交省主催で開かれた「第1回 新しい物流システムに対応した高速道路インフラの活用に関する検討会」で提示された資料によると、日本の物流の1日当たりのトリップ数(トラックの発着回数)は、3763万トリップに及んでいるが、そのうち県境を越えて物資を運んでいるのは221万トリップと、わずか6%以下に過ぎない。

同じ資料によると、東名・名神高速道路の総延長は、日本の自動車専用国道も含めた高規格幹線道路の総延長の約7%に過ぎないが、この区間におけるトラック貨物輸送量は、日本のトラックによる貨物輸送の実に48%にも及ぶ。これは、中京工業地帯、京阪神工業地帯と京浜工業地帯が圧倒的な生産量を誇っていることによる。

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