実は「高速道200円で普通車乗り放題」が可能な訳 NEXCOの計画「2066年に無償化」は絵に描いた餅
高速道路の定額化によって、大型トレーラーで東京-青森間の往復8万3960円の高速道路料金が5000円になり、さらにこれまでの借金の償還を止めて利子だけの返済に変えれば1600円へと激減する。
これだけの経費が削減できれば、地方からの物流が活発化することは、言うまでもないだろう。これまで3工業地帯に集中していた製造業が、地方へと分散化することも間違いない。
人が生きていくのに必要なものは「衣食住」といわれるが、街・都市が存続していくのに欠かせない要素は「費職住」である。費は消費ができるか、職は職業、つまり就職先が得られるか、そして住環境が整っているかだ。この3要素のうち、とりわけ地方にとって確保しにくいのが「職」=就職先である。
飲食業や小売業、医療やインフラなどの第3次産業がGDPの8割を占めるといっても、人のいない地域に第3次産業だけが進出し、集積することはありえない。
しかし、製造業をはじめとする第2次産業は、適切な用地さえあれば立地しうる。製造業が進出すれば、工場に働く人がその周辺に住む。そしてやがて、街ができてくる。過疎から脱却し、また過疎化を逃れる一番手っ取り早い手段は、工場に立地してもらい、その地域の「費職住」を充実させることだ。
定額制が実現すればこんなにも利点が
高速道路の定額制が実現すれば、広大な敷地の上に建つインターチェンジは必要なくなり、安価に出口を作ることができる。高速道路の沿線ならばどこでも交通至便な工業団地の適地にすることができる。
日本は東証一部上場企業2174社(2021年9月末時点)のうち、1073社が千代田区・中央区・港区の都心3区に集中している。日本の国土のわずか1万分の1の地域に、日本の大企業の半数が立地しているのだ。これは異常というしかない。
一方で、ニューヨーク証券取引場の上場企業約2300社のうち、ニューヨーク市に本社を置いている企業は、200社程度に過ぎない。
この差をもたらす大きな原因も、「地方ほど都市部へ行くのにお金がかかる」という高速道路料金制度なのである。
地域経済を支える農業・伝統産業には、野菜や木材をはじめ、漆器や陶磁器など単価に比べて重くかさばる製品が多く、物流コストが割高となる。中国から大阪まで野菜を運ぶより、東北から野菜を運ぶほうが物流費が高くつくのだ。これでは、地方の農業・伝統産業が衰退しないわけがない。
高速道路料金の定額化は単に物流経費を削減し、物流にかかる時間を短縮するだけでなく、人々の交流を進め、「職」を生み出し、ひいては地方の文化・産業を活発化させる効果を持っているのである。
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