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学習障害だった彼女が26歳以降に得た人間の底力 「脳は生涯変化する」身をもって証明してみせた

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そして1980年、28歳だった彼女は自分が作った学習法を活用して「アロースミス・スクール」という学校を開設した。いうまでもなく、その目的は学習障害のある子どもたちを助けること。困難を抱えたこの脳がうまく働くようになることに焦点を合わせ、障害の根本的な原因に対処しようと考えたわけである。

バーバラには自分自身の体験から、学習困難は一生つづくものではないという確信があった。そしてトレーニングをはじめる時期に「遅すぎる」ということもない。現に彼女が自分の脳を鍛え始めたのは26歳のときだ。この年齢でもなお脳は可塑性をもっている。ということは、脳の変化は生涯にわたって起こる可能性がある。また改善された機能は、かなり長期間にわたって維持される。さらに一度獲得した機能を、その後も日常的に使いつづけることが刺激になり、脳にいい影響を与えつづけることも期待される。(88ページより)

彼女はそのことを、身をもって証明してみせたということだ。一時は自殺寸前にまで追い込まれながらも、「そこからなんとか抜け出したい」という思いを抱き続け、努力を重ねたから、その思いが画期的な結果につながっていったということなのだろう。本書が読者に強く訴えかけてくるのは、そうしたバックグラウンドがあるからにほかならない。

人間とはなにか

本書は当然ながら、バーバラの半生を伝えるために書かれたものである。だが著者によれば、目的はもうひとつあったのだという。そのことについての考えを引用してみよう。

この本を書くことで、学習障害という事案を通して「人間とは何か」を考えてみたいと思った。人間がもっているさまざまな能力、そのプラス面を増幅させることならAIにもできる。むしろAIのほうが遥かに見事にやってのけるだろう。AIの存在意義はそこにしかないと言ってもいい。人間はそういうものではない。マイナスから価値を引き出しうるのが人間である。マイナスが堆積してゼロになっても、なおそこに至高の価値を見出すことができる。(「あとがき」より)

すなわちここで著者は、“私たちが私たちとして生きる理由”を、バーバラの半生を通じて考えようとしているのである。ここに続く「いかにマイナスを輝かせるか、それが来るべき世界の価値になっていくだろう」という一文が強い説得力を感じさせるのは、きっとそのせいだ。

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