「リスクゼロを目指す」企業ほど社員が硬直する訳 組織の存在意味が共有された会社はうまくいく

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「警戒する組織」では、誰かがリスクを指摘すると、全員の意識が責任回避に向かい、場が固まります。そして、すべてのリスクを避けるべく複雑な議事録が配布され、がんじがらめで身動きがとれない状態に陥ってしまいます。

一方で、目に見えないリスクや、責任の所在があいまいなリスク、例えば「先延ばしのリスク」は無視されます。皮肉なもので「過剰な警戒心」や「リスクゼロを求める思考」こそ、より大きな危機や組織の閉塞感を生み出してしまう原因となることが多いのです。

「共感する組織」の一丁目一番地

ユーザーが求めているのは「守りに徹する官僚的な答弁」でなく、「率直で誠実な態度」であり、「人間的な対話」です。警戒心や戦略思考で失ってしまった人間性を取り戻すことが、「共感する組織」の一丁目一番地なのです。

さらに根源的な課題として、「この組織は、社会にどんな価値を提供するために存在しているのか」という、「組織や事業が存在する意味」が共有されているかどうかが、とても大切です。社員1人ひとりが自律的に考え、人間的で、臨機応変な行動をとるためのコアとなるものだからです。

自分の仕事がどんな意味を持つのかを言語化して、同僚と共有することで、「しなくちゃ」となっていたメンバーの意識が、「しよう」「したい」に変わります。

その際、社員がその意味をどう受け取るかが重要になります。本人がしっかりと意味を腹落ちすれば「しよう」「したい」となりますが、厳しく言いつけたり、賞罰で行動を統制したりすれば、「しかたない」「しなくちゃいけない」となります。

組織や社会が持つ規範を受け入れることを「内在化」または「内面化」といいます。ここで気をつけたいのは、「内在化」には「取り入れ型」と「統合型」があることです。

「取り入れ型」は、規範を噛み砕かずに丸ごと飲み込むことです。規範は外部からの命令として吸収され、結果として、融通のきかないルール運用につながってしまいます。

それに対して「統合型」は、規範を自分のなかでよく消化してから吸収することです。規範は「自身の内なる声」となり、組織内の共感を促す対話や行動ができるようになります。

例えば、朝礼で理念を連呼するだけでは、言葉として暗記するだけで「取り入れ型」になってしまいます。「社長はこう言っていたから」「会議でこう決まったから」と、何か「1つの言葉」をルールのように絶対視して、それに基づいて考えることを場に強制してしまうのです。すると組織は「思考停止状態」に陥ってしまいます。

言葉そのものを取り入れるのではなく、その根底にある意味を読み解き、日常の行動と紐付け、理解してはじめて、意味が本人に内在化され、現実の仕事に生きてくるのです。

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